図 会見に臨む,オムロン 代表取締役社長の作田久男氏。
図 会見に臨む,オムロン 代表取締役社長の作田久男氏。
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 オムロンは,2008年度中間期(2008年4~9月)の連結決算について,減収減益だったと発表した(PDF形式の発表資料)。売上高は前年同期比3.1%減の3546億7000万円,営業利益は同30%減の186億300万円である。要因として,低調だった国内の売り上げ,原材料価格の高騰,為替の影響を受けたことを挙げる。営業利益の前年同期に比べた減少分80億円のうち,原材料価格の高騰分が約9億円,為替が約37億円分を占めると説明した。

 減益の主な要因となった部門は,家電向けスイッチ,コネクタや液晶バックライトなどの家電・通信用電子部品を手掛けるECB部門,車載用リレーなどの自動車用電子部品を扱うAEC部門,家庭用および医療機関向けに健康・医療機器を扱うHCB部門である。

 ECB部門の売上高は前年同期比9.5%減の717億8600万円,営業利益は同62.4%減の22億7200万円だった。特に不調だったのはアミューズメント向け製品である。同分野は2007年度も不調で,同年度の売上高は計画の約7割に当たる220億円だったが,2008年度はさらに悪化し130億円弱に落ち込むと見積もる。アミューズメント向け製品は売上高営業利益率が20%以上と高く,影響が大きかった。これまで好調だった中国向けの制御コンポーネントも,伸びが止まった。計画を30%弱上回るほど好調だったのが中小型の液晶バックライトである。中国工場の自動化や,部品の内製化,部品統合を進めたことで,売上高営業利益率を4.75%まで向上させた。だが,アミューズメント向け製品での打撃が大きく,液晶バックライトだけでは部門全体の悪化をカバーするには至らなかった。

 AEC部門の売上高は前年同期比5.2%減の503億2800万円,営業損失は前年同期と比べて20億4800万円減の15億2600万円の赤字だった。北米での不調が大きく,為替の影響を含めて売上高43億円の減少につながった。同部門の不調は下期も続くと見ており,通期営業損益は40億円の赤字になると見込む。同社 代表取締役社長の作田久男氏は「2007年には必死の思いで黒字化したのに…」と悔しさをにじませた。

 HCB部門の売上高は前年同期比1.6%増の326億7000万円,営業利益は同5.7%減の30億7000万円だった。高付加価値品の多い国内市場での売上高が同10.3%減と大幅に下落した影響が大きいとする。例年,国内民生品では年末商戦に当たる12月や1月の売上高は高い傾向にあるが,今年は既に量販店や通販での売り上げ予測から「あまり期待できないことが確定的になっている」(作田氏)。さらに海外でも民生品の悪化と為替による影響があると考えられ,2008年度通期は「かなり厳しいと想定している」(作田氏)。

 同社の主力部門で,センサや基板検査装置などの工場自動化制御機器を扱うIAB部門について,売上高は前年同期比1.6%減の1584億4200万円,営業利益は同9.4%減の223億800万円だった。同部門では為替の影響が大きく,現地通貨ベースであれば海外はほぼ計画通りで堅調だったとする。ただし,欧州では不況の影響が表れ始め,下期の動向に懸念を示す。これまで好調だったトルコでは7月から,売上高の大きいイタリアやスペインでは8~9月にかけて陰りが見え始めているとする。

 自動改札機や道路交通管制システムなどの社会システムを扱うSSB部門について,売上高は前年同期比3.4%増の340億8700万円,営業損益は前年同期と比べて1億100万円減の6000万円の赤字だった。ただし,同部門では期初の計画の段階で4億円の赤字を見込んでいたため,現時点では堅調で下期も予定通りとする。

 2008年度通期業績予測については,2008年4月28日に発表した数値から下方修正した。売上高が前年度比5.0%減の7250億円,営業利益は44.8%減の360億円と見込む。前回の数値と比べると,それぞれ550億円,240億円の減少となる。下方修正の理由としては,国内製造業の設備投資抑制,電子部品の低迷,北米を中心とする自動車業界の減産などの影響を受けるとする。

 オムロンでは中期経営計画を見直すとしており,事業や開発・生産・販売などの機能,拠点や組織について選択と集中をさらに進め,収益構造の改革を実行する。作田氏は今回の不調を,これまで抱えたままになっていた課題を解決するための「いい機会」(作田氏)と前向きにとらえる。

 改革の一つとして取り上げるのが「リレープロジェクト」である。同社では,リレーをIAB,AEC,ECBの3部門で扱っており,それぞれが開発・生産・販売を行っている。開発や生産,材料購買を一本化したり,販売についても社内にこだわらず外部に任せたりすることで,収益性の向上が見込める。しかし,各部門はできるだけ改善に留め,抜本的な改革は避けたがる傾向があるとする。実際,これまでは2003年頃からの好景気に支えられて増収増益が続き,こうした見直しがなおざりになりがちだった。同社では2008年の期初計画の段階で前年に比べて収益が悪化すると判断,対策に着手してきた。今回,不況が明確になることで「社員の真剣度も増すだろう」(作田氏)と期待する。