講演する矢田直樹氏 日本シノプシスが撮影。
講演する矢田直樹氏 日本シノプシスが撮影。
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ルネサスの自動車エンジン制御用マイコンのロードマップと今回のチップ 中央下にある開発コード名が「SUZAKU」がそれ。同社のデータ。
ルネサスの自動車エンジン制御用マイコンのロードマップと今回のチップ 中央下にある開発コード名が「SUZAKU」がそれ。同社のデータ。
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SUZAKUの仕様とチップ開発のポイント ルネサスのデータ。
SUZAKUの仕様とチップ開発のポイント ルネサスのデータ。
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IC Compilerの適用フロー ルネサスのデータ。
IC Compilerの適用フロー ルネサスのデータ。
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詳細配線時に行うルネサス独自の追加処理内容 ルネサスのデータ。
詳細配線時に行うルネサス独自の追加処理内容 ルネサスのデータ。
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 ルネサス テクノロジは,自動車のエンジン制御用マイコンの設計に,米Synopsys, Inc.の自動配置配線ツール「IC Compiler」を適用した事例を発表した。従来使っていた自動配置配線ツールをIC Compilerに替えたことと,面積の小さなスタンダード・セルに替えたことによって,120MHzの動作周波数でも,高放熱タイプでない一般的なQFPに封止可能にすることができた。

 この発表は10月17日に日本シノプシスが東京・品川で開催の「Japan Synopsys Users Meeting 2008」で行なわれた。登壇したのは,ルネサスの矢田直樹氏(マイコン統括本部マイコン第一事業部自動車用マイコン第二部 主任技師)である。今回IC Compilerを適用したチップはフラッシュ混載の90nmプロセスで作る「SUZAKU」(開発コード名)で,SH-2Aコアを搭載し,動作周波数は最大120MHzである。

  SUZAKUは,同じSH-2Aコアを搭載し,動作周波数が最大200MHzの「SH72544R」の下位品種になる。SH72544RはBGAパッケージに封止していたが,SUZAKUは,高放熱タイプでない一般的なQFPに封止したり,チップ面積を小さくすることで,低価格化を図り,市場競争力を高めるというミッションがあった。

既存ツールとセル・ライブラリでは無理

 ところが,SUZAKUの開発初期段階で机上計算したところ,SH72544Rと同じベンダーA(Synopsysではない)の自動配置配線ツール,およびSH72544Rと同じセル・ライブラリを使ったのでは,消費電力が大きすぎてQFPに封止できそうもないことが判明した。そこで,自動配置配線ツールとセル・ライブラリを新しくすることになった。

 まず,これまで使っていたベンダーAのツールとIC Compilerを比較した。比較には,SH2Aコアを題材に双方を稼働させた。この結果,IC Compilerの方がチップ面積(スタンダード・セルの占有面積)が29%小さく,タイミング(worst negative slack)は約60%改善し,実行時間は約30%短かった。

 一方セル・ライブラリに関しては,次のような説明があった。今回のセル・ライブラリは低価格化と低電力化のために,従来のセル・ライブラリよりコンパクト(小チップ面積)にした。このためDFM(design for manufacturability)という視点では,以前のセル・ライブラリより基本的に不利だった。矢田氏によれば,一般にDFM的に優れたチップは信頼性も高くなり,車載半導体の厳しい要求仕様を満たしやすい。