《Microsoft編》

 マイクロソフトがゲーム機市場への参入を正式に表明したのは2000年3月10日,プレイステーション 2が日本国内で発売されたすぐ後だった。パソコンで動作するOS「Windows」に強みを持つ同社が選んだ戦略はいわば,ゲーム機をパソコン化するというもの。世界的な水平分業・大量生産体制のおかげで,パソコンの製造コストは以前に比べて飛躍的に下がっていた。ソフトウエア会社であるマイクロソフトの依頼に応じて,ゲーム機の設計・製造を請け負ってくれる企業も増えていた。

 このため,マイクロソフトのゲーム機の設計はパソコンの文化を色濃く踏襲する。電解コンデンサや大きなコイル部品がずらりと並ぶ基板の設計は,部品点数の削減や小型化,信頼性の重視といった家電的な考え方が随所に現れる任天堂のゲーム機やプレイステーション・シリーズとは対称的である。

Xbox(2002年2月発売,3万4800円)

 2000年3月の発表から約2年を経て発売されたマイクロソフトの初のゲーム機。CPUは米Intel社がPentium IIIをベースに開発した「Mobile Celeron」,GPUは米NVIDIA社が「GeForce 3」をベースに開発した「XGPU」。I/O制御LSIもNVIDIA社が開発した。64Mバイトの主記憶をCPUとGPUで共用する設計になっている。また,ゲームの実行に有利なように,ジオメトリ演算はGPU側で実行できるようにしてある。(関連記事

 パソコンを彷彿させるのはCPUやGPUの選択だけではない。ハードディスクやDVDドライブもパソコン向けの汎用品を使っている。同時期に発売されていたプレイステーション 2やニンテンドーゲームキューブの基板に比べると,巨大と思える基板のサイズも,パソコンでは一般的な大きさである。使われているコンデンサやコイルなどの選択もパソコンに近い。この辺りは,製造を担当したシンガポールのFlextronics社の技術に寄る部分も大きそうだ。(関連記事

「Xbox」の基板
「Xbox」の基板 (画像のクリックで拡大)