NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏
NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏
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 NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏は,幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2008」において,「ケータイの今とこれから」と題する基調講演を行った。この中で辻村氏は,これからの携帯電話機を表すキーワードとして「インターネットのケータイ化」を挙げた。パソコンをベースとするインターネットが,今後は携帯電話機の特徴を取り込んで進化するという。また,この進化の大きな軸として,「ブロードバンド化」,「リアルとサイバーの融合」,「グローバル化」の3つを挙げた。

 ブロードバンド化については,将来的に世界のほとんどの地域がLTEを導入すると予測する。NTTドコモは2010年度にLTEを導入したいとする。辻村氏によれば,HSDPA化やLTE化に伴って,動画をダウンロードしたり,ストリーミングで視聴できるようになるだけでなく,上りの通信速度が高速化することによって,パソコンにはなかったリアルタイム性が実現できるという。例えば,電車事故などの出来事に遭遇した人が,携帯電話機で撮影した動画を携帯電話機からインターネットに投稿し,その状況を知りたい人がすぐに閲覧できるという状況が実現する。これは,携帯電話機がカメラとディスプレイという撮影機能とディスプレイ機能を両方持つことによるものと,辻村氏は説明した。

また,LTE化によって端末とサーバーの負荷のバランスが変化するという。端末とコアネットワークとをつなぐパイプが10倍程度太くなり,遅延が少なくなるため,これまでは端末上で処理していた保存や計算などを,サーバー側で肩代わりできるようになる。この変化によって,端末はディスプレイなどの入出力関係に注力出来るようになり,端末の進化の方向性が変わる可能性があるとする。

 携帯電話機の進化の軸の一つに挙げたリアルとサイバーの融合は,ユーザーが携帯電話機を通じて日常生活とインターネット上の空間を行き来しながら,自分にとって最適な行動を取れるようになること。辻村氏はこの例として,おサイフケータイを使った新幹線の乗車変更で,何度でも乗車変更ができることを挙げ,電車遅延などの予期しない行動が起こっても,携帯電話機を通じてそれに対応した行動が取れるようになってきていると説明した。また,これらの携帯電話機の機能は「日本に特殊なものではなく,世界の先を行っているだけ。大きな方向としては,世界も同じ方向に進むと考えている」とした。さらに,日本マクドナルドと共同で手掛ける携帯電話機を使ったマーケティング事業を紹介し,この事業では携帯電話機にダウンロードしたクーポンから,顧客の属性データや購買情報などを一部取得して,マーケティングに役立てていると話した。

 グローバル化については,携帯電話機向けソフトウエアの開発の負担が増えている状況を説明し,今後は世界的に端末プラットフォームの共通化が進むとした。ソフトウエアの構造は,共通のOS上に通信事業者で共通の「グローバルアプリ」を乗せ,それに通信事業者の「オペレーションパック」などを付加する形に変化するという。これが,端末コストの低減や国内メーカーの海外進出,海外メーカーのドコモへの参入につながると説明した。

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