図1 握手を交わす関係者
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図2 三菱自動車の電気自動車「iMiEV」。後ろの建物は東京都にあるアイスランド大使館である。
図2 三菱自動車の電気自動車「iMiEV」。後ろの建物は東京都にあるアイスランド大使館である。
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図3 アイスランドでのエネルギー需給の状況
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図4 アイスランドのCO<sub>2</sub>削減計画
図4 アイスランドのCO<sub>2</sub>削減計画
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 三菱グループとアイスランド政府は電気自動車の走行実験などを通じて,同国の化石燃料に依存しないエネルギー政策の推進に協力することで合意,覚書を交換すると発表した(図1)。三菱自動車が電気自動車「iMiEV」の走行試験を2009年度中にアイスランド政府と共同で実施する(ニュース・リリース1)。三菱重工業と三菱商事が電気自動車のインフラ整備や石油代替燃料のDME(dimethyl ether:ジメチルエーテル)の生産などで協力する(ニュース・リリース2)。

 アイスランドは,同国で消費される1次エネルギーの大部分を地熱発電と水力発電で賄っている。2005年の1次エネルギーは15.5×1016Jで,このうち約55%を地熱発電が,約15%が水力発電で占め,合計70%ほどになる(図3)。アイスランドは残りの約30%を占める石油や石炭などの化石燃料の割合をさらに減らし,化石燃料をまったく使わない社会の構築を目指している。そのための活動の一環として,アイスランドは,同国の地熱発電設備でこれまでに密接な関係を築いてきた三菱グループと手を組んだ。

 アイスランドは,首都レイキャビック周辺の約20km四方に人口が集中している。一回の充電で走行距離が限られている電気自動車の実証実験に向いている。また,アイスランドの気候は最低温度-10℃,最高気温は+20℃ほど。日本に比べて1年の変動が少ない。そのため電気自動車の実用性と搭載する電池の性能を実証する場として適当だという。また,気温変動は小さいが,平均気温は低く,暖房を使う場面が多い。暖房は冷房よりも電力消費が大きいので,実際の走行にどこまで影響を与えるかどうかを調査するのに適すると説明する。

 三菱重工業と三菱商事は,このほかに漁船の燃料をDMEへ変更する活動にも協力する予定である。具体的にはアルミ精錬所から排出されるCO2と,地熱発電から生じる随伴ガスのCO2とCO,H2,電気分解によって得るH2を使い,DMEを生成する。DMEの利用により,同国のCO2年間排出量の約17%を占める漁船からのCO2(化石燃料由来)を削減する考えだ(図4)。