Geniusの素晴らしさを訴えるJobs氏(写真撮影:鈴木淳也)
Geniusの素晴らしさを訴えるJobs氏(写真撮影:鈴木淳也)
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 「The reports of my death is greatly exaggerated(私の死亡に関する報告なんて,それはあまりにも大げさだ)」。いつもと同様に舞台脇から姿を現したSteve Jobs氏。開口一番こう告げると,関係者が居並ぶ会場は拍手と歓声に包まれた――。

 米Apple Inc.の新型iPod発表会は,同社CEOのJobs氏が,自身の健康不安説などの憶測報道に対して,明確な否定を示すことから始まった。健康不安などは一切無いとばかりに,サクッとこの話題を終わらせて,本題に入った。

「6500万のアカウントがある」

 Jobs氏はまず,同社のコンテンツ配信サービス「iTunes store」の好調ぶりを説明した。iTunes storeによる音楽コンテンツの販売規模が,米Walmartや米Best Buyなど大手量販店での販売数を上回ったことを例に示しながら,「iTunesは米国市場で,最大の音楽販売事業者になった」(Jobs氏)という。また「6500万のクレジット・カードのアカウントが,iTunes storeで利用されている」とし,iTunes storeの米国市場での普及が順調に進んでいるとの認識を示した。さらにiTunesソフトウエアの新版「iTunes 8.0」をリリースしたほか,一時販売を停止していた米NBC Universal, Inc.の映像コンテンツを再び販売開始することを明らかにするなど,iTunesの利用をさらに増やすための施策をアピールした。

 なかでもiTunes 8.0から初めて導入される,「Genius」と呼ぶ機能の説明に時間を割いた。Geniusは,楽曲コンテンツのデータベースの中から,ユーザーが選択したコンテンツの属性情報に応じたプレイリストを作成するもの。「ユーザーが選択した曲とぴったり合った曲を,ユーザーに推薦してくれる。このプレイリストの出来は,かなり素晴らしい(pretty wonderful)」(Jobs氏)という。

「ユーザーの手のひらに美しくフィットする」

 iTunesに関する話題のあとは,iPod新機種の紹介である。iPodシリーズは,2008年6月までの累計で,1億6000万台が販売済みという。さらにiPod製品群は,米国の携帯型音楽プレーヤー市場において,73.4%の市場占有率があるとの調査結果(2008年7月の集計)を示し,順調ぶりをアピールした。

 今回発表した新機種は,「iPod nano」と「iPod touch」などである(Tech-On!の関連記事)。筐体全体に楕円状のデザインを採用したnanoについては,「iPod nanoはこれまでで最も薄いiPodである。この楕円形の形状は,ユーザーの手のひらに美しくフィットするだろう」(Jobs氏)と期待を込めた。このほか「iPod shuffle」や「iPod Classic」も,カラーや価格面での変更があった。
 
 発表会は最後に,米国のロック・ミュージシャンであるJack Johnson氏による演奏で幕を閉じた。何か,もう一つくらいの新発表を期待していたメディアにとっては,「One More Thing」が無かった分,少し肩透かしされた印象もあった。