スクウェア・エニックス 代表取締役社長の和田洋一氏
スクウェア・エニックス 代表取締役社長の和田洋一氏
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 スクウェア・エニックス 代表取締役社長の和田洋一氏は,帝国ホテルで行った記者会見の中で,テクモに対して友好的TOBを提案した背景を語った(Tech-On!関連記事)。

 理由の一つは,事業の上での相乗効果が狙えると判断したことである。和田氏は,テクモの開発チームを「極めて優れたクリエイター集団」と評価した上で,「今の世界市場で事業を拡大するには,世界で戦えるだけの流通・販売チャネルを持つものと手を組む必要がある」(和田氏)とした。かつてスクウェアとエニックスを合併させた背景にも,流通・販売チャネルにおける同様の問題意識があったという。

 加えて,両社が得意とするゲームのジャンルの違いから,クリエイター同士が互いに才能を触発し合う効果も期待する。スクウェア・エニックスは「ドラゴンクエスト」や「FINAL FANTASY」といったロールプレイング・ゲームを強みとするのに対し,テクモは「デッド オア アライブ」や「NINJA GAIDEN」などのアクション・ゲームを得意とする。

 今回,TOBの提案を決断したもう一つの背景には,テクモにおける社内の混乱がある。2008年6月には,テクモの看板プロデューサーが,成功報酬と慰謝料の支払いを求めて会社を提訴。続いて2008年8月20日には,代表取締役社長だった安田善巳氏が突然辞任するなどして,テクモの経営陣や従業員に動揺が広がっていた。

 和田氏は,2008年5月の段階からテクモと協業に関する話し合いを行っており,「今の段階で経営陣や従業員に,スクウェア・エニックスが考える方向性を示すことが重要と考えた」(和田氏)。

 一連の混乱で和田氏が何より心配するのは,テクモの開発チームの士気が低下することだという。「ゲーム・コンテンツとは,1人の天才ではなく『チーム』が作るもの。(社内の混乱で)チームの間に不安が広がれば,(人間関係が悪化するなどして)チームの劣化は想像以上に早い速度で進む。ゲーム開発において,チームが崩れることは『全滅』と同じだ。いかにチームを保全するかが重要になる」(和田氏)。

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