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 Ricoh Americas Corp.による米IKON Office solutions, Inc.の買収について,記者会見が2008年8月27日の21時10分から行われた(速報記事)。リコーとして過去最大の買収に乗り出す狙いなどについて,社長執行役員の近藤史朗氏と専務執行役員の三浦善司氏は,次のように述べた。

■買収の狙い
・北米における販売力の拡充。
 IKON社はフォーチュン500の企業の多くを顧客としている。
・サービス事業の強化(次項目参照)
 IKON社は,印刷に関わる顧客の全業務を請け負うサービス事業を既に収益化している。規模も大きく,売上高では19%を同事業が占めている。

■サービス事業を強化する理由
 リコーはこれまで,ハードウエアに価値を詰め込んで顧客に提供してきた。しかし,その価値は年々目減りし続けている。加えて,顧客のニーズが変わっている。複写機/複合機自体の機能のみならず,ワークフローの改善やセキュリティ強化といった,より高度なサービスを求めている。
 この傍証の一つが,A4版対応の小型複合機の売れ行きだ。新興国はさておき,先進国では予測されていたほど普及していない。サービス事業によって先進国市場を深耕したい。
 我々はハードウエアをきちんと作り込んでいくという製造業の基本を絶対に捨てない。その上でソフト・サービスを提供する会社になりたい。だから今回,我々はサービス事業の強化に向けて資金を投じるのだ。

■キヤノンとの関係
 IKON社の売上高のうちキヤノン製品が6割,当社製品が3割ほどを占めている。キヤノン製品の比率がこのまま推移するとは考えにくいが,維持に努める。そのためには,IKON社の幹部や顧客の離反を抑えなければならないと考えている。

■買収後における収益イメージ
 売上高が年間4000億円ほど上乗せされる。営業利益面では,リコー・グループ入りしたばかりのIKON社は利益がほぼ出ないだろう。IKON社がリコー系になることによる機会損失が生じるからだ。ただ将来的には,営業利益額を2007年9月期実績から倍増させたい。そうなれば営業利益率が10%に到達する。

■IKON社との統合計画
 バックオフィス(管理部門)は統合するものの,まずはリコーの米国拠点と併存させる。IKON社の売上高や従業員は,リコーの米国拠点よりも大きい。IKON社への配慮を怠らずに,あるべき体制を考えたい。将来的にリコーとIKON社が販売・サービス網を統合した方が合理的ならば,そうするだろう。

■ディストリビューターの事業環境
 変曲点を迎えている。複写機や複合機の新機種を顧客に紹介しても,簡単に売れる時代ではない。あるディストリビューターが特定地域だけに強くても,多国籍企業は世界各地で使う複合機を一括して入札で決めようとしているので,こうした受注が取れない。システム・インテグレーターとしての力量を備える必要もある。
 こうした中,独立系ディストリビューターは次の進路を模索しており,その一つが会社の売却になっているようだ。当社の前に,米Xerox Corp.が米Global Imaging Systems, Inc.を,コニカミノルタが米Danka Office Imaging Co.を買った。

■その他
・会見時間が遅いのは,ニュージャージー,ロンドンで同時に発表するため
・今回の買収は,2008年4月ころIKON社から持ちかけられた。当社は2007年に世界各地の情報システムを一本化し終えて,攻めに転じようとしていたところだった。
・買収に伴って社外から調達する金額は,買収金額とほぼ同じ1700億規模だろう。既に発行した社債の償還が間近だからだ。