日本政府は,韓国Hynix Smiconductor, Inc.製のDRAMに課している関税を27.2%から9.1%に引き下げる。日本は,Hynix社が韓国政府から2度にわたって補助を受け,日本国内へDRAMを低価格で輸出しているとして,2006年1月より同社製DRAMに27.2%の相殺関税を賦課してきた。この関税措置に関して2007年12月,WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)から日本に是正勧告があり,日本は2008年1月から是正に向けた調査を進めていた(Tech-On!関連記事)。

1回目の補助に対しては措置が間に合わず

 日本は2001年10月と2002年12月の2度,韓国政府からHynix社への補助行為があったとしてきた。このうち2001年分について,WTOは2001~2005年を補助金配分期間,すなわち相殺関税措置を発動できる期間と定め,日本政府が関税措置を発動した2006年1月はこの期間から外れているとした。これを受けて,日本は2001年の補助行為を課税対象から外し,今後は2002年の補助行為に対してのみ相殺関税措置を続ける。2001年分にかかる税率18.1%を撤廃し,2002年分にかかる9.1%を今後の相殺関税率とした。税率変更は2008年9月1日に施行する。

 この相殺関税措置は原則,発動から5年にわたって継続できる。ただし,Hynix社は日本に対して事情変更レビュー(事実上の再調査)を申請できる。米国はWTOの是正勧告後の税率が44.29%,欧州は32.9%だったが,両地域とも事情変更レビューにより相殺関税撤廃を決めている。

 DRAMの日本市場では相殺関税発動以降,Hynix社の販売金額シェアが減少し,エルピーダメモリのシェアが拡大している(上図)。日本の調査当局は,Hynix社製DRAMへの相殺関税の多寡は,DRAMの日本市場での競争やエルピーダメモリの国内生産活動などに影響を与えるとみている。エルピーダメモリは「結果は結果として粛々と受け止める。今後,不公正な状況が発生した場合には迅速な対応を図る」(同社広報)とコメントした。

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