図1 台湾・竹南にあるGintech社の第2工場。Gintech社提供
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図2 Gintech社の太陽電池セル。Gintech社提供
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図3  Gintech社董事長のC.T. Kuo氏。著者が撮影
図3  Gintech社董事長のC.T. Kuo氏。著者が撮影
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図4 Gintech社の結晶型太陽電池セル製造ライン。Gintech社提供
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図5 太陽電池セルの検査工程。Gintech社提供
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 台湾でも太陽光発電産業が急速に立ち上がってきた。2010年で世界第3位の太陽電池セル・メーカーになることを目指して積極的な事業展開を仕掛ける台湾Gintech Corp.の戦略を創業者でもある同社 董事長のC.T. Kuo氏に聞いた。


――Gintech社の太陽電池製造の現状と将来計画を聞きたい。

Kuo氏  Gintech社は,2007年に150MWの生産能力を備える第2工場を稼働させた。これで,第1工場の60MWと合わせると,210MWになる。2008年末には,第2工場の生産能力は600MWになる。また,第3工場の計画もすでに動き出している。まず2009年夏に240MW分の設備を導入し,10月に稼働させる。最終的には同工場だけで,840MWまで拡充する計画である。2010年には,生産能力の合計が1.5GWになり,いわゆる「GWクラブ」の仲間入りをする。


――積極的な事業展開を押し進めるキッカケ何か。

Kuo氏  Gintech社は,2005年に設立された新しい会社である。私は,30年間の事務機器の事業を経た後,2000年に中国石油の経営に関わり,当時台湾一の企業に育て上げた。


石油ビジネスを手がけた当初は,1バレル25米ドルであったのが,3年半で75米ドルになり,現在では130米ドルを超えるまで高騰している。石油に替わるエネルギーとして太陽光発電は有望な技術であり,これまで関わってきたエネルギー事業に関する経験を活かすために,この太陽光発電の事業に参入した。


――Gintech社が展開を進めていくうえでの指針を聞きたい。

Kuo氏  Gintech社では,七つの経営戦略を掲げ,2010年には世界の太陽電池セル・メーカーの第3位になることを目指している。すなわち(1)最新設備の導入,(2)最高の良品率と変換効率の達成,(3)最低の生産コストの追求,(4)最大の生産規模の達成,(5)最良の研究開発チームの育成,(6)最強のサプライチェーンの統合,(7)最善のサービスの提供,の七つである。


――御社の製造ラインの特徴はどのような点にあるのか。

Kuo氏 常に最新の設備を導入することを考えており,既存のラインでも必要であれば最新の設備に入れ替える。このため,利益を設備投資にまわし,減価償却を加速している。


当初,製造ラインにはドイツ企業のターンキーを導入した。しかし現在では,性能や品質に関わるところを自分たちで勉強し,独自の技術を盛り込んでいる。その結果,性能,変換効率,歩留まりなど,既にドイツ企業と同レベルに達している。


――台湾で太陽電池事業を進める優位性はどこにあるのか。

Kuo氏 台湾の優位性は,人件費,土地・建物を安く,原材料もドイツ企業と比べると安く仕入れることができる点にある。工場を24時間,365日無休で稼働させて製造コストを下げていけば,OEM事業だけでも十分採算が合う。来年は,生産する600MWの内の1/3をOEMで出荷することを考えている。順調に行けば,半分はOEMに回したい。


2009年末に生産能力を合計1GWまでに増強をする時点で,世界一のコスト・レベルになることを目指している。このコストが達成できればOEMビジネスが優位になる。


――現在,太陽電池業界にはSi基板の供給不足という課題がある。こうした状況に対するGintech社の考え方を聞いたい。

Kuo氏 今後の事業環境では,材料の購買や製品の営業が重要な役目を持つようになる。2,3年先は,生産を中心に考えて行く必要があり,営業力および経営戦略が重要になってくる。


今は,需要が多いが,価格競争も激しくなり,来年以降,台湾内の企業も数社に絞られてくるだろう。その時には,Si材料,ウエハーを供給する川上の事業に進出する必要が出てくる。モジュールやシステムなど川下の事業への進出も検討中である。コスト競争が激しくなれば,川下の事業を始めることになろう。


――台湾でも太陽電池メーカーが数多く生まれてきており,この分野での人材を集めるのは難しくなっているのでは。

Kuo氏 台湾は,半導体産業のインフラがあり,優秀な人材も多く,工場を建てるには良い環境である。Gintech社の従業員は現在586人であり,その半数がエンジニアである。10人の研究開発専任の技術者も抱える。GWクラブに入るほどの規模になれば,研究開発を強化し,製造プロセスの改善,変換効率の向上,コスト低減に,さらに力を入れていく。


――日本を含めた世界の太陽光発電市場に向けた戦略を聞きたい。

Kuo氏 日本の太陽光電池セル・メーカーは知名度,販力ともに高い。Gintech社が日本で事業をすることは難しい。しかし,Gintech社の太陽電池セルは薄く,性能には自信を持っている。日本を含めた世界中のパートナーと,OEM関係などで戦略的として共存していくことを考えている。


本インタビューの内容を含め,日本・中国・台湾・韓国の最新の太陽光発電産業の状況を日経マイクロデバイス誌9月号に掲載予定です。本インタビューは,6月に実施したものであるが,将来の生産数値に関しては,インタビュー後の同社の経営会議で見直された最新の値を掲載しています。


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