IDFの基調公演に登場したCraig Barrett氏
IDFの基調公演に登場したCraig Barrett氏
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Carnegie-Mellon大学のJohnny Lee氏がWiiリモコンを採用した対話的なホワイトボードをIDFで紹介した
Carnegie-Mellon大学のJohnny Lee氏がWiiリモコンを採用した対話的なホワイトボードをIDFで紹介した
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 「ぼくはいつも,社内の人に『今,Craig Barrettはどこにいるか』と聞いているんだ」。米Intel Corp. 開催の「Intel Developer Forum 2008 Fall(IDF)」の最初の基調講演で,同社のSenior Vice President兼Digital Enterprise Group,General ManagerのPat Gelsinger氏は,同社ChairmanのCraig Barrett氏をこの言葉で紹介した。Barrett氏はChairmanに昇進した後,IT技術を全世界の経済や社会問題の解決に貢献する活動のために,全世界を旅している事実を参加者に説明した。

 Barrett氏の講演内容は,Intel社の最新技術を宣伝するよりも,自身が進めているこうした活動をアピールすることが中心だった。「先進国以外の50億の人々に対して,技術が彼らの日常生活によい影響を与える可能性が感じられる。それは,非常にエキサイティングだと思う」(同氏)。同氏はこうした考え方から,Intel社が教育や医療,経済,環境の問題を解決するアイデアに10万米ドルの賞金を与える「INSPIRE・EMPOWER Challenge」と呼ぶコンテストを開始することも明らかにした(PDF形式の発表資料)。

 Barrett氏は米国の政治的な話題も触れた。同氏は,1990年代に入って中国やインドなどの新興地域の人々が世界の市場に本格的に参加するようになってきたと指摘した。Barrett氏は,一年間に平均約30カ国を訪問する活動の中で,「これからの経済成長のためには,労働力の品質を高めるために,技術や教育に投資することが必要だと皆が認識している。それはどの国を訪問したときも同様に感じたことだ」(同氏)。しかし,米国政府は,こうした思想を持っていないと指摘した。「我々は,必要になるまで教育を重要視しない傾向がある」(同氏)。

 Barrett氏は,米国政府の研究開発政策も批判した。米国政府はこれまで,企業の研究開発投資に対して税金の控除をしていたが,その制度が最近失効したという。「政府は,研究開発投資が米国の今後の競争力の維持に重要であるという認識を,捨てたとも受け取れる行動だ」(同氏)と,政府の政策を批判した。

 Barrett氏はこのほか,技術が社会に影響する可能性を示すプロジェクトをいくつか紹介した。一つは米Carnegie-Mellon Universityの大学院生であるJohnny Lee氏が開発したWiiリモコンとホワイトボード関連のアプリケーションである。Lee氏は,Wiiリモコンとプロジェクタなどを利用して,対話的なホワイトボードを実現する例を示した。Lee氏の試作システムでは,赤外線のLEDを組み込んだマーカーなどを利用した。Barrett氏は,こうした技術は教育に具体的な影響を与える例として賞賛していた。