学会の予稿集はとにかく分厚く,かさばる。CD-ROMやUSBメモリに格納された予稿集データをノート・パソコンで閲覧するには,目が疲れたり電源が心配だったりする――。このような不満を解決できる一つの手段として考えられるのが,電子ペーパーの活用だ。筆者が雑誌ブログで「学会で電子ペーパーが配られる日」を書いたのが2005年12月。これが,徐々に現実に近づいてきている。
2008年6月25~27日に開催された日本画像学会の年次大会「Pan-Pacific Imaging Conference ’08(PPIC ’08)」において,ブラザー工業が東海大学と共同で実証実験した(発案は東海大学)。ブラザー工業が試作した電子ペーパー端末に予稿集データを表示させ,一部の学会参加者に使用してもらう実験である。
この実証実験の概要やブラザー工業の電子ペーパー端末への取り組みなどについて,同社 NID開発部 プロジェクト・マネジャーの藤井則久氏とNID開発部 準事業グループの寺尾威生氏に話を聞いた。
(聞き手:小谷 卓也=日経エレクトロニクス)
――今回の実証実験の概要は。
我々は,画面寸法が9.7型の電子ペーパー端末を試作した。端末の厚さが12.4mmと薄く,重さが380g(電池含む)と軽いのが特徴だ。表示は白黒4階調で,画素数は1200×825。精細度は約150dpiとなる。電子ペーパーは外部調達して,我々が端末に仕上げた。電子ペーパーの調達先は非公開である本誌注)。
本誌注)表示の見映えなどから判断すると,米E Ink社製の電子ペーパーとみられる。
この端末を20台用意し,学会が開催された3日間,それぞれ20人ずつに貸し出して使ってもらった。つまり,計60人に使ってもらったことになる。事前告知に対する使用希望者の中から,年齢や性別などが分散するように60人を選んだ。
実験の目的は,大きく二つ。第1は,使用者からのアンケートを集計して使い勝手などを検証すること。そして第2は,このような電子ペーパーの用途があることを広く認知してもらい,研究開発の促進につなげることである。
――アンケートの結果はどうだったのか。
現在,さまざまな角度からアンケート結果を集計しており,詳細は(学会など)別の機会に発表する予定だ。ざっくりとした反応としては,好意的な意見が約4割。一方で,まだまだ課題が多いとの指摘も2割ほどあった。
――予稿集を表示させる用途に着目した理由は。
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