ダウンロード違法化の問題は,善良なユーザーであっても,罪を犯さないようにインターネットを利用することがほぼ不可能になる点です。Webサイトに掲載された画像や音楽ファイル,動画などの中には,再生するまで中身が分からないものが多数あります。こうしたデータを再生して,それがもし違法な複製に当たるとしたら,その時点でユーザーは犯罪を犯したことになります。現在のWebブラウザーは,動画や音楽を再生する際に,大抵は手元にコンテンツを一旦ダウンロードしてから実行します。つまりユーザーが無意識に「ちょっと見ただけ」でも,コンテンツは複製される可能性が高いのです。

 私的録音録画小委員会では,この点に懸念を表明しダウンロード違法化に強く抵抗した委員がいました。ですが,そうしたユーザーが実質的には罪に問われないようにする措置を組み込めば問題ないという方向で大勢の議論がまとまりました。具体的には,YouTubeのような「ストリーミング視聴」を採用するサイトを対象外としたほか,違法なコンテンツをダウンロードしてもユーザーに刑事罰を科さないことにしました。また,民事訴訟を起こす場合も権利者側に立証責任があり,そのユーザーが事前にそのファイルが違法であると分かった(法的には「情を知る」と表現します)上で,ダウンロードしたことを証明する必要があります。

 このような制約があるため,ダウンロード違法化が仮に実施されても,実質的にはほとんど使われない可能性があります。ダウンロード違法化を推進する側は,違法なコンテンツの利用を違法行為であると法的に規定することで,ユーザーに行為の自粛を求める効果を狙っているようです。しかし,それで違法コンテンツの流通がどれだけ減るかは全く分かりません。