米連邦通信委員会(FCC)は, 米ケーブルテレビ事業者大手のComcast Corp.がFCCが定めた「インターネットの原則」に違反したと正式に認定した(PDF形式の発表資料)。

 Comcast社はケーブルテレビのサービス以外に,ブロードバンド接続サービスも提供している。同社のブロードバンド接続サービスにおいて,Comcast社はユーザーのピアツーピア(P2P)通信トラフィックを止めたことが明らかになった。こうした行為はFCCが2005年8月に設立した「Internet Policy Statement」(PDF形式の発表資料)に違反するとFCCが判定した。具体的には,FCCの5人の委員のうち,3人が今回のFCCの認定を支持して,2人が賛成しなかった。

 今回問題となったComcast社によるP2P通信を止める行為は,Comcast社のユーザーが見つけて,米活動団体Free PressとPublic KnowledgeがFCCに正式に申し入れたことで発覚した。この行為についてComcast社は,「我々のユーザー全員のブロードバンド接続品質を守るために導入した」と主張した。しかし,FCCの調べによると,Comcast社の行為は同社のネットワークの混雑状態とは無関係に実行された。「ある地域ではComcast社はP2Pの接続の3/4程度まで干渉した可能性がある」(FCCの発表資料)とする。FCCは,動画も配信されるP2P通信がComcast社のケーブルテレビ・サービスで提供するVOD(video on demand)サービスと競合することが今回の行為の一因になった可能性があるとの見解を示した。

 FCCが特に問題視しているComcast社の行為はユーザーが通信するパケットの中身を開いて,調査した後にフィルタリングをしたことと見られる。これを受けて,FCC会長のKevin Martin氏は以下の声明を出した。「もし郵便局があなたの郵便物を開いて,転送先に配送しないと決めて,その事実を隠すために郵便物に『住所が不明,送り主に返す』との判を付けて返したとしたら,あなたはその行為を認めるか。残念ながらComcast社はこれと同様の方法で,同社の加入者のインターネット・トラフィックを処理した」(PDF形式の声明)。

 今回のFCCの認定に対して,Comcast社,Corporate Communications and Government Affairs,Senior DirectorのSean Fitzmaurice氏は「我々はFCC委員会が弊社の行為に対して罰金を課さないとしていることなどに満足している」(Comcast社の声明文書)との声明を出している。しかし,同氏は「ネットワーク管理の選択肢の一つとして今回の我々の行為は妥当」(同声明)との主張を続けた。さらに,同声明においてFitzmaurice氏は「我々は全ての法的な選択肢を検討中である」とコメントしている。従って,Comcast社は今後FCCの認定に対して裁判で争う可能性が高いと見られている。