薄型テレビのオーディオが抱える問題とは・・・,アナログ・デバイセズがオーディオ向けLSIの説明会を開催
アナログ・デバイセズは2008年7月25日,同社のオーディオ向けDSPやD級アンプといったオーディオ用LSIに関する記者説明会を開催し,オーディオ用LSIの事業状況や同LSIに要求される特徴などを紹介した。
オーディオ用LSIをはじめとするコンシューマー機器に向けた製品は同社事業の柱であり,米Analog Devices,Inc.の世界全体の売り上げのうち22%を占める。この比率は通信機器向け製品と同じであり,47%を占める産業機器向けに次ぐ。成長率も高く,2007年の売上高は前年比23%増だったという。日本市場ではコンシューマー機器向け製品の比率は59%とさらに高く,同24%の産業機器向けを大きく引き離している。
薄型テレビのさらなる薄型化で音質低下・・・
携帯機器や車載機器,薄型テレビなどに用いるオーディオ用LSIで求められる特徴の説明の中で,興味深かったのは薄型テレビ向けの要求条件である。薄型テレビにおけるオーディオ機能では今,大きく三つの問題点を抱えているという。(1)オーディオ特性を高いレベルに保つことが難しいこと,(2)ヒートシンクなどの搭載スペースがほとんどなくなったこと,(3)音声を遅延させて映像と同期させる必要があること,である。
(1)と(2)の問題点は,2007年あたりから筐体の薄型化に向けた動きが激しくなってきたことが背景にある。筐体の容積が減るので,スピーカーを薄く,かつ小さくしなければテレビの筐体内に収められなくなった。それにより,低音の再生能力が落ちてしまう。筐体内のスピーカー配置も一筋縄ではいかないこともあり,スピーカーの周波数特性は悪化し,周波数に対するスピーカー出力は一定でなくなるという。筐体の容積が減ることは,アンプ回路の放熱対策用にヒートシンクを設けられなくなることにもつながる。
その解決策として,(1)についてはオーディオ用DSPの信号処理を充実させることを挙げた。具体的には,オーディオ用DSPで低音を増強させる技術や周波数特性をフラットにするためのイコライザ技術などになる。これらの技術は薄型テレビで使われるAnalog Devices社のDSP「Sigma DSP」で採用済みである。今後,よりテレビが薄型化することで周波数特性の補正が複雑になることを考慮し,Sigma DSPの処理能力を高めるとともに処理アルゴリズムを改良する予定とする。例えば,現在は75MIPSおよび125MIPSであるSigma DSPの処理能力を,今後150MIPS,200MIPSに高めるという。これにより,現在は最大10バンド程度であるイコライザのバンド数や,FIRフィルタのタップ数を増やせるとする。処理アルゴリズムとしては,同社独自で用意したものに加え,サード・パーティーのベンダーが開発したものを使えるようにしているという。
リップシンクは合計で最長400msの遅延に対応
(2)の問題点については,AB級アンプといったアナログ技術を使ったアンプではなく,効率が高いとされるD級アンプを使うことで対処でき,ヒートシンクをほとんど不要にできるとする。例えば,Analog Devices社のD級アンプ「ADAU1592」は,30W出力時(チャネル当たり15W,ステレオ出力)で効率は87%超(8Ω負荷時)と高いという。
(3)の問題点は,フルHD化など画像データ量が増え,かつ映像処理が複雑化していることから映像処理に要する時間が長くなっていることが背景にある。画像処理によって遅延した映像信号に同期させるため,音声信号の出力を遅らせる時間,つまりリップシンクする時間が長くなっている。そのため,Analog Devices社のオーディオ用LSIの中には,音声信号を合計で最長400ms(ステレオ信号のとき最長200ms)遅延できるだけのメモリを搭載したものを用意しているとした。












