図1:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた,太陽付近の磁力線と太陽表面の温度分布
図1:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた,太陽付近の磁力線と太陽表面の温度分布
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図2:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた,地球公転面内の太陽風速度。赤い色が高速風,青い色が低速風を表す。太陽と地球の円は実際よりも大きく描かれている
図2:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた,地球公転面内の太陽風速度。赤い色が高速風,青い色が低速風を表す。太陽と地球の円は実際よりも大きく描かれている
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図3:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた磁気圏の状態。左上は磁力線,右上はプラズマ圧力,左下は極域の活動度,右下は太陽風パラメータの最近6時間分のデータを表す
図3:リアルタイム宇宙天気シミュレータで得られた磁気圏の状態。左上は磁力線,右上はプラズマ圧力,左下は極域の活動度,右下は太陽風パラメータの最近6時間分のデータを表す
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図4:東京付近における電離圏じょう乱日(2008年6月14〜15日,赤線で表示)の電離圏全電子数(単位:10<sup>16</sup>cm<sup>-2</sup>)の変化。上がリアルタイム宇宙天気シミュレータの計算結果,下が観測から求められた電離圏全電子数である。点線は電離圏静穏日の変動を表す
図4:東京付近における電離圏じょう乱日(2008年6月14〜15日,赤線で表示)の電離圏全電子数(単位:10<sup>16</sup>cm<sup>-2</sup>)の変化。上がリアルタイム宇宙天気シミュレータの計算結果,下が観測から求められた電離圏全電子数である。点線は電離圏静穏日の変動を表す
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 情報通信研究機構(NICT)は,太陽面から地球の超高層大気までの状態をスーパー・コンピュータを用いた計算により数値的に再現し,リアルタイムで表示する「リアルタイム宇宙天気統合シミュレータ」を開発した(発表資料)。既存の地球磁気圏の予報に加えて,電離圏のじょう乱による衛星測位システムの誤差の増加予測や,オーロラの発生予知も可能になったという。

 リアルタイム宇宙天気統合シミュレータは,既に開発していた磁気圏のシミュレータと,今回新たに開発した二つのシミュレータ,太陽および太陽風をリアルタイムで再現するシミュレータと,電離圏および熱圏のリアルタイム・シミュレータで構成される。統合シミュレータの完成により,太陽から地球周辺までの現在の状態を再現できるようになった。例えば,太陽面から放出される太陽風が地球周辺まで到達する様子や,磁気圏/電離圏/熱圏の状態がどのようになっているかなどを画像で表示できる。また,極域電離圏におけるオーロラの発生を計算で求めて,その結果を表示することが可能である。

 今回開発したシステムでは,特に電離圏じょう乱と熱圏大気膨張の予測精度が向上した。無線通信やGPSによる測位,低軌道衛星の運用に影響を及ぼすじょう乱を,より正確に予測できるようになった。また,従来のシステムに比べ,電離圏の状態を約3日早く予報できると見込む。今回のシステムの計算結果は,インターネット上のNICTのWWWページで公開する。

 NICTは今後,今回開発したシミュレータによる予測と,衛星や地上からの観測で得られるデータとを比較し,モデルの検証と改良を行う。さらに,数時間~数日先までの宇宙環境を予測する技術の開発を進める。3~4年後に予想される,次の太陽活動極大期に向けて,本格的な「数値宇宙天気予報システム」の構築を目指すとしている。

 今回のシステムは,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)「リアルタイム宇宙天気シミュレーションの研究」の下で,九州大学,気象大学校,伊藤忠テクノソリューションズの協力により開発した。NICTのスーパー・コンピュータSX-8R(NEC社製)上で動作しているという。

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