Giga-IRの送受信モジュールに携帯電話機を組み込み,パソコン側の送受信モジュールと通信する様子。送信と受信は別になっている。携帯電話機の右にある二つの穴の左側が送信用,右側が受信用。
Giga-IRの送受信モジュールに携帯電話機を組み込み,パソコン側の送受信モジュールと通信する様子。送信と受信は別になっている。携帯電話機の右にある二つの穴の左側が送信用,右側が受信用。
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 KDDIはワイヤレスジャパン2008で,データ伝送速度1Gビット/秒の赤外線通信仕様「Giga-IR」の実演を披露している。想定する用途は携帯電話機の音楽データや映像データを,他の携帯電話機やパソコン,テレビ,DVDレコーダ,プリンタなどへ高速転送する,というものである。

 この通信仕様は同社が開発し,赤外線通信の標準化団体「IrDA (Infrared Data Association) 」で2009年3月の完了を目標に標準化を進めている。当初は「EFIR(extremely fast infrared communication)」という名前だったが,検討委員会から仕様を実際に策定するSIG(Special Interest Group)に移行する際に,名前が変わった。

 1Gビット/秒という高速にしたのは,「100Mビット/秒前後の速度では既存の無線技術と差異化が図れないと考え,思い切って大幅に高速化を狙った」(同社)ため。1Gビット/秒であれば,「音楽データ20~30曲分を1秒で転送できる」(同社)という。

 発光素子にLEDを用いる従来の赤外線通信と異なり,Giga-IRでは半導体レーザ素子を用いる。モジュール寸法が大きくなったり,コストが高くなるのではという本誌の問いには「発光素子自体はLEDよりむしろ小さい。送受信回路も今後1チップ化するため,モジュール寸法は既存の赤外線モジュールと同程度にできる。コストも量産時には(10~20円/個の)赤外線通信モジュールとあまり違わないレベルにできる」(同社)という。

 レーザとはいえ,光は光軸から10度の範囲で広がりを持つことから,光軸合わせはそれほど難しくない。レーザの出力は数mWで目に安全な「Class 1」レベルだという。

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