高速無線LAN規格「IEEE802.11n」の次を見据えた動きが,いよいよ始まる。無線LANの標準化を進めるIEEE802委員会は,現行のIEEE802.11nよりもさらに伝送速度を高めた次次世代規格の策定作業を,2008年後半から開始する。

 実効的なデータ伝送速度を数Gビット/秒まで高めることを目指したもので,プロジェクト名は「VHT(very high throughput)」である。VHTはこれまで,作業部会設置に向けた検討段階(SG:study group)という位置付けだった。それが2008年7月13日~18日に米コロラド州デンバーで開催されていた会合において,VHTを正式な作業部会(TG:task group)に昇格させることがほぼ決定した。次回会合以降,具体的な標準化作業がいよいよ本格始動する。

「Below 6GHz」プロジェクトのみが昇格

 実効的なデータ伝送速度をGビット/秒クラスに引き上げることで,GビットEthernetの無線化を始め,家庭内のHDTV動画伝送や,ホットスポットの高速化,工場のオートメーションでの利用などを視野に入れている。周波数帯域には6GHz未満を適用するとみられる。今回のプロジェクトを主導したグループには,米Intel社や米Motorola社,カナダNortel Networks社,米Marvell社,米Qualcomm社,米Broadcom社などが含まれている。

 VHTは,データ伝送速度を高速化するに当たり,どの周波数帯域を利用するかで大きく二つの意見が異なるグループがあった。それは6GHz未満の周波数帯域を利用することを目指すグループと,60GHz帯(ミリ波)の適用を目指すグループである。意見が大きく対立したため,それぞれ別のTGを設立する方向で議論が進んでいた。今回,TGへの昇格が認められたのは6GHz未満のプロジェクトのみで,60GHz帯利用プロジェクトの昇格は見送られた。60GHz帯利用の高速伝送規格に関しては,既にIEEE802.15.3cの規格化が進んでいることから,その必要性に関して疑問が呈されたためとみられる。