グローバル展開で情報共有の場を提供 ※NIKKEI MICRODEVICES特別編集版『PVJapan 2008 ナビゲータ』(2008年7月発行),PP.8-13から転載。所属,肩書きは当時のものです。

問◎製造装置業界にとって,太陽電池はどのような位置づけで,どのような期待が寄せられているのでしょう。

答◎太陽電池には多くの技術があり,製造装置各社の取り組みはさまざまです。ラインをまるごと受注するターン・キーのソリューションを提供する企業もあれば,これからの参入を狙って技術や製造法を見極めようとしている企業もあります。ある分野でターン・キー事業が中心になったとしても,すべての装置を1社でそろえるわけではありませんので,サブシステム・メーカーにとっても事業機会はあります。

 このような状況下では,「標準」があるとないとでは製造コストが違ってきます。製造コストが下がれば製造装置メーカーはサブシステムを安く購入できますし,結果を出すまでの時間短縮にもつながります。このことは太陽電池メーカーにとっても大きな魅力になるはずです。ただ,今の太陽電池業界で標準があるべきだというコンセンサスにはなっていません。太陽電池モジュール・メーカーからは,「標準ではないところで差異化を図る」という話も聞こえてきます。世論は熟していませんが,われわれは太陽電池産業の重要性が増す中で,標準化のニーズが生まれると信じています。

問◎FPD産業の場合は産業が本格的に立ち上がってから標準化の議論をしましたが,太陽電池は今の段階からコミットしていこうとしているのですね。

答◎SEMIとしては,「ある項目について標準化すべきだ」とリードすることはありません。われわれのビジネス・モデルは,あくまでも産業を代表する企業に発展していくための場を提供することです。企業が技術的なリーダーシップを発揮していくことをサポートする立場でありたいと思っています。

問◎SEMIとして太陽電池に対してどう取り組んでいるか,グローバルな動きから具体的に教えてください。

答◎まずストラテジー・ミーティングとして,世界のSEMIの代表者が私も含めて10名程度で毎月集まったり電話会議を開いたりしています。それぞれの地域の情報を出し合いながら情報交換し,どういったサービスを提供できるかを議論します。また太陽電池に関する各地域の意見を吸い上げる「PVリージョナル・コミッティー」を開催しようとしています。今後は,委員会からの意見をいただき,展示会やセミナーなどに反映させていく計画です。

 太陽電池の製造装置・材料に関する統計も取り始めました。まだ公開できませんが,SEMIの統計は信頼性の高さで評価されていますので,まとまれば価値の高いものになるはずです。  展示会は,7月の「SEMICON Wes t」で「Intersolar North America」を併催するほか,「SEMICON Taiwan」の中で「PV Power Expo」を今年初めて開きます。欧州も同様に既存の展示会にパビリオン併設などをしています。中国ではセミナーを実施していますし,インドやロシアを含むグローバルなネットワークを持っているのがSEMIの強みです

問◎日本では,どう取り組みますか。

答◎一つは会員企業の事業発展の中でSEMIというプラットフォームをいかに使ってもらうかという点を考え,もう一つは会員企業だけではなくこの産業全体を広げるという期待に対して,皆様の声を把握したいと思います。そのうえで,どのようなサービスを提供すべきかを考えていこうとしています。

 具体的には,4月に開催した「Global FPD Partners Conference(GFPC)」で太陽電池セッションを設けました。また7月30日~8月1日に東京ビッグサイト・東ホールで「PVJapan 2008」を開催します。コンセプトは,「技術」「ビジネス」「普及」そして「交流」で,普及・拡大をはじめすべてのバリュー・チェーンをカバーします。

 PVJapanは,SEMIと太陽光発電協会(JPEA)の共同開催の形で実施します。会議棟ではJPEA主催の「太陽光発電システムシンポジウム」が開かれます。また,再生可能エネルギー(RE)協議会による「新エネルギー世界展示会」,そして「AIST-RCPV成果報告会」などを同時開催し,これら全体で「再生可能エネルギー世界フェア」としています。

 PVJapanの出展社数は約180社で,500ブース前後になる見込みです。再生可能エネルギーのエリアを含めたフェア全体では300社,600ブースを超える規模となります。再生可能エネルギーは太陽電池の啓蒙・広報,太陽光発電協会は太陽電池の普及,SEMIは製造装置・材料・モジュール製造など製造に焦点をあてます。

 さらにPVJapanでは日本学術振興会第175委員会と応用物理学会の協力もいただいて,「アカデミアエリア」に大学の研究成果を出してもらいます。

問◎PVJapan 2008の見どころは?

答◎展示会場内の特別展示エリアで,産業技術総合研究所の協力を得て太陽電池の製造工程について分かりやすく解説するのが一つ。もう一つは,資源総合システムなどの協力を得てビジネス参入を考えている方々にガイダンスになるような展示を行います。

 さらに,野口健氏がアルピニストの目で見た太陽電池を語るなど,一般の方が楽しめる講演も行います。SEMI Tutorialも開催します。会議棟ではJPEAと協力し,インストーラのための設計支援セミナーを実施します。

プロフィール
中川 洋一
 1976年に東京エレクトロン入社後,アプライドマテリアルズジャパン,GEキャピタルジャパンを経て,ヘリックステクノロジー,ノヴァ・メジャリング・インストゥルメンツの代表取締役社長。2008年1月,半導体やFPDをはじめとする製造装置・材料関連の国際工業会SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)の日本オフィス代表に就任した。