地球環境に対する意識の高まりとともに,「省エネ」に対する消費者の関心が高まっている。こうした中で注目を集めているのが省エネ型電気温水器「エコキュート」である。ヒートポンプを利用することで高いエネルギー効率を実現した電気温水器だ。実は,この温水器でもマイコンが活躍している。今回は,エコキュートを世界で初めて発売したコロナにマイコンの役割を聞いた。

図1

図1 ヒートポンプを使う電気給湯器「エコキュート」
コロナが2008年7月下旬に発売する新製品

 エコキュートの仕組みは,早い話がエアコンと同じだ。ヒートポンプで冷媒を圧縮し,このとき発生した熱で温水を作る。ヒートポンプを稼働させるためには電力が必要だ。ただし,電気ヒーターで水を直接温める従来の電気温水器と比べると,エネルギーの消費効率は3倍以上も高い。財団法人電力中央研究所が開発した技術をベースに,東京電力,カーエアコン事業でコンプレッサーのノウハウを持つデンソー,そして給湯器などの住宅設備事業を手掛けるコロナの3社が共同で開発。2001年5月にコロナが世界に先駆けて最初の製品を発売した(図1)。

 省エネに対する関心の高まりと連動するかのように,エコキュートの累積出荷台数は右肩上がりで伸びている。2002年3月時点で約3400台だった累積出荷台数は,2007年9月に100万台を突破した(図2)。最近では給湯器の買い替え需要のうち,エコキュートが約10%を占めるという。

図2
図2 「エコキュート」の出荷台数推移(社団法人日本冷凍空調工業会のデータ)

 エコキュートはヒートポンプの冷媒に,エアコンで使われる代替フロンではなく二酸化炭素を使う。これが,高いエネルギー消費効率を実現できた大きなポイントの一つだ。さらにもう一つ,エネルギー消費効率の改善に貢献したのがマイコンだった。

「沸かし過ぎ」は意味がない

小野 幸男氏
コロナ 技術本部
電装開発センター 部長
小野 幸男氏

斎藤 芳美氏
コロナ 技術本部
電装開発センター 係長
斎藤 芳美氏

 マイコンを使って実現した省エネ機能の一つが,日々の温水の使用量を見て最適な温水量を計算し,翌日の稼働に反映させる学習機能だ。エコキュートは水を蓄えるタンクを内蔵している。ここに蓄えた水に,ヒートポンプで過熱するわけだが,いつも満タンの状態にして過熱するわけではない。「いくらエネルギー効率が良いとは言っても,使い切れない量の水を沸かしていたのでは意味がないからです」(コロナ技術本部電装開発センターの小野幸男部長)。そこでマイコンで日々の使用量を一定期間にわたって計測。そのデータから,それぞれの家庭で過不足のない量を割り出し,通常はその量の水を過熱することによって,無駄なエネルギーを消費するのを抑えている。

 ただし,この学習機能だけでは,一時的な使用量の変化に対応できない。来客などで温水の使用量が急に増えたときに,温水が足りなくなってしまう事態も考えられる。しかもエコキュートの場合,50リットルの温水を作るのに約1時間かかるため,急に必要になったからといって,すぐに温水を供給できない。こうした問題が生じないように,エコキュートにはタンク内の温水の量の変化を監視して,温水が足りなくなるのを予測する機能が組み込まれている。この機能を利用して,タンク内の温水が底をつく前に,新たな温水を作ることができるわけだ。このシステムにもマイコンが使われている。「温水を作るのに時間がかかるというエコキュートの弱点を,マイコンを利用して対策することができました」(同社技術本部電装開発センターの斎藤芳美係長)。