ソフトウエアも内製

図3 商品企画と消費者向け販売以外はすべて担う  Hon Hai社は,外観デザインから量産出荷に至るすべての工程を担う能力を備える。同社のGou氏は,この利点を「One Stop Shopping」と呼び,インタビュー中にメモを交えてその利点を強調した。「協力廠」(協力企業)をHon Hai社がすべて引き受けることで,量産出荷までに要する時間が縮まる,と同社は主張する。
図3 商品企画と消費者向け販売以外はすべて担う  Hon Hai社は,外観デザインから量産出荷に至るすべての工程を担う能力を備える。同社のGou氏は,この利点を「One Stop Shopping」と呼び,インタビュー中にメモを交えてその利点を強調した。「協力廠」(協力企業)をHon Hai社がすべて引き受けることで,量産出荷までに要する時間が縮まる,と同社は主張する。 (画像のクリックで拡大)

 ここぞと考える事業分野を一気に獲得するためには,豊富な資金に物を言わせた企業買収もいとわない。Hon Hai社のGou氏が「One Stop Shopping」と呼ぶ,顧客が望むほとんどのサービスを一括して提供する体制を築くためだ(図3)。工程ごとにさまざまな受託企業を利用する形態に比べて,やりとりにかかわるオーバーヘッドを大幅に減らせることを顧客にアピールする。

図4 広範な製造技術に研究開発費を投じる  Hon Hai社は,日本,台湾,米国を中心に,14の研究開発拠点を抱える。さらに現在,各研究拠点の中心となる研究開発センターを台湾の台北近郊に建設している。2006年夏には完成予定である。主に,ナノテクノロジー,精密金型,機械加工,ディスプレイ,半導体に関する技術を開発するという。ただし,2005年に投じた研究開発費は300億円ほどだが,これは営業収入の約1%と低水準である。近年特に力を入れている分野として,光学部品や自動車部品の製造技術,人件費の高騰を受けた製造自動化技術などが挙げられる。
図4 広範な製造技術に研究開発費を投じる  Hon Hai社は,日本,台湾,米国を中心に,14の研究開発拠点を抱える。さらに現在,各研究拠点の中心となる研究開発センターを台湾の台北近郊に建設している。2006年夏には完成予定である。主に,ナノテクノロジー,精密金型,機械加工,ディスプレイ,半導体に関する技術を開発するという。ただし,2005年に投じた研究開発費は300億円ほどだが,これは営業収入の約1%と低水準である。近年特に力を入れている分野として,光学部品や自動車部品の製造技術,人件費の高騰を受けた製造自動化技術などが挙げられる。 (画像のクリックで拡大)

 例えば,ソフトウエアや通信モジュールの開発リソースを得るために,2005年5月には台湾Chi Mei Communication Systems,Inc.(奇美通訊)を傘下に収めた。同社には,Motorola社の「Windows Mobile 2003 Software for Pocket PCs」を使った携帯電話機「MPx」を開発した実績がある。

 この結果,Hon Hai社は,「外観デザインから量産出荷に至るすべての工程を担う能力を獲得した」(台湾系のEMS企業)。加えて最近はパソコン・メーカーに対する商品提案力もつけており,「次のモデル,そのまた次のモデルと試作して持ってくる。我々に逃げるすきを与えない」(日本のパソコン・メーカー)。

 従来のEMS企業の事業分野を超え,部品開発よりさらに上流の研究開発にも力を入れる(図4)。特に力点を置くのが,レンズなど光学部品の製造技術や,自動車向け部品の製造技術,そして製造ラインを無人化する技術だ。「自動化装置を手掛ける日本や欧州の装置メーカーとともに,無人化に向けた検討チームを立ち上げた」(Foxconn International社のDai氏)。