インドに大工場を建設

 さらなる事業規模の拡大に向けて,Hon Hai社は中国ばかりでなく,市場の急成長が今後期待できるインドやブラジルにも製造拠点を矢継ぎ早に立ち上げている。特にインド工場は「深セン龍華工場並みの大規模工場にしたい。機器の組み立てだけでなく,金型やプリント基板といった部材もインドで製造する」(同社のGou氏)。

 Hon Hai社が進出したインド南部のChennai近郊には,フィンランドNokia Corp.や米Motorola,Inc.も進出している。Hon Hai社の進出は,「顧客の要望に沿ったもの」(同社の関係者)である。携帯電話機の生産は,2006年夏から始める。パソコンやデジタル・カメラの生産も視野に入れている。

(2)事業分野
ほとんどの部材を内製化,研究開発にも意欲

 「速い」「安い」「うまい」のいずれにも貢献しているのが,筐体や液晶モジュール,カメラ・モジュールといった部品の内製である(図2)。Hon Hai社が自らスタートさせた部品事業もあれば,近年買収によって獲得したものもある。このうち世界トップ・シェアを誇る部品事業には,パソコンのマイクロプロセサ用ソケット,デスクトップ・パソコンのベア・ボーン,ノート・パソコンや携帯電話機のMg筐体がある。

図2 「電池セルと半導体以外みな造れる」  Hon Hai社は携帯電話機について,2次電池セルや半導体,受動部品を除くほとんどの部材を内製できる。従来は内製できなかった部材も,技術を持つ企業を買収することで製造できるようになった。青字は,最近3年の間で携帯電話機に関連する企業を買収した例や,内製を始めた事例を示した。このほかの買収例では,2004年3月にフランスThomson Groupの光ヘッド製造部門を買収した例がある。(イラスト:笹沼真人)
図2 「電池セルと半導体以外みな造れる」  Hon Hai社は携帯電話機について,2次電池セルや半導体,受動部品を除くほとんどの部材を内製できる。従来は内製できなかった部材も,技術を持つ企業を買収することで製造できるようになった。青字は,最近3年の間で携帯電話機に関連する企業を買収した例や,内製を始めた事例を示した。このほかの買収例では,2004年3月にフランスThomson Groupの光ヘッド製造部門を買収した例がある。(イラスト:笹沼真人) (画像のクリックで拡大)

 ただし,部品選定に当たってグループ企業が優遇されるわけではない。「Hon Hai社は一切,えこひいきしない。良い部品を提供できる企業さえ生き残ればいいという台湾流の考えを貫いている」(日系電子部品メーカーの販売担当者)。グループ外の部品メーカーと競わせることで,内製部品の競争力を維持するためだ。