昼夜を問わず稼働するこの不夜城で生み出される最終商品を知って,驚かない者はいない。「iPod nano」「ニンテンドーDS」「PSP」,そして米Motorola,Inc.の薄型携帯電話機「RAZR」。フィンランドNokiaCorp.の携帯電話機や,米Dell Inc.のパソコンなどもある。さながら世界的なヒット商品の見本市の様相を呈している。
社名が表に出ることの少ない製造受託という業態もあって,Hon Hai社の存在はそれほど広く知られていない。ところがその一方で,Hon Hai社の業績は爆発的としかいいようがない勢いで伸びている。同社の売上高の伸びは,連結決算の発表を始めた1999年度以降,年率40%以上を維持している。2005年度の連結売上高は,対前年度比で実に68%増の3兆1056億円。シンガポールFlextronicsCorp.に,優に1兆円を超える差をつけた。シャープや三洋電機といった大手民生機器メーカーを凌駕する。まさに,水面下に出現した巨大メーカーといえる。
材料や部品から機器(セット),サービス,コンテンツまでの各業界における付加価値の大きさを示した,いわゆる「スマイル・カーブ」の中で,Hon Hai社が最大の収入源としているセットの製造は「底」の部分に当たる。すなわち,高い利益率を得ることは容易ではない。ところが,Hon Hai社の2005年度の営業利益率は5.4%と,スマイル・カーブの「縁」も手掛ける大手電機メーカーの多くを上回る。1.9%にすぎないFlextronics社や505億円もの営業赤字を計上した米Sanmina-SCI Corp.はHon Hai社の足元にも及ばない。