前回までのあらすじ
2003年初頭,Apple社は「iPod mini」の開発に着手した。フラッシュ・メモリを使った安価で小型な音楽プレーヤーの市場を奪う狙いである。4Gバイトの1インチHDDの採用で小型・軽量化を追求し,カラフルな筐体でファッションの一部になることを目指した。(以下の本文は,『日経エレクトロニクス』,2004年8月2日号,pp.167-169から転載しました。メーカー名,肩書,企業名などは当時のものです)

Light not Heavy Metal

 Danikaらは,筐体の材質も従来のiPodとは変えた。トレードマークだった白のプラスチックとステンレス鋼の代わりに,陽極酸化を施したアルミニウムを用いた。Danikaによれば,アルミニウムはApple社のお気に入りで,多くの製品で採用済みだ。酸化過程で付けた色の,てかてかせず落ち着いた仕上がりも,Danikaらの理想にかなった。

 何より,アルミニウムは名実共に軽くて強かった。「iPodのステンレスの部分は,傷とか指紋が付きやすいと感じる人がいる。アルミならば,それほど貴重な感じがしないじゃない? アルミはもっとがっしりしてる。腕やベルトに付けたって,キズとか欠けたりとかに気をつかわなくて済む。しかも,頑丈なのに重くならないんだから」(Danika)。

 Portelligent社のDavidも,Apple社の選択を支持する1人だ。「筐体は,iPod miniの設計の賢い部分だね。内側にプリント配線基板をはめ込むレールを一緒に形成するなど,工夫を凝らしてる。多分,押し出し成形を使って安く作っているんだと思う。ディスプレイ用の穴なんかは成形後に1個1個機械加工が必要だけど,それでも以前のiPodほど高くはないかな」。

mini Algorithm

 小柄になったiPod miniに,Apple社自慢のiPodの体験を封じ込めるには,それなりの工夫が必要だった。意外なところにも目配りの跡がある。例えばジュークボックス・ソフトウエア「iTunes」の新バージョンに,iPod miniを想定したアルゴリズムを追加した。