米Atheros Communications,Inc.は,通信容量が最大600Mビット/秒の無線LANのアクセス・ポイント向けプラットフォーム「AR9002AP」のサンプル出荷を日本国内で開始したと発表した。
AR9002APは,家庭向けブロードバンド・ルーター機能と無線LAN機能を1枚のボードにまとめたもの。無線LANとしては,2.4GHz帯と5GHz帯のIEEE802.11nの草案に準拠した通信モジュールを2個搭載する。一方を2.4GHz帯,もう一方を5GHz帯の無線で同時利用できるのが特徴である。それぞれの最大伝送速度は300Mビット/秒。合わせて,600Mビット/秒の通信容量を利用できる。
同社によれば,家庭ではパソコンのほか,デジタル・カメラ,セット・トップボックス,HDDプレーヤ,ゲーム端末,携帯電話機,デジタル・フォト・フレーム,プリンタと様々な機器が無線LAN機能を備え始めている。今回の製品は,これら多数の端末を,通信の品質を保証しながらネットワークにつなぐために開発したという。
帯域の確保など通信の品質保証には,IEEE802.11eなど標準仕様に加えて,「iQUE」と呼ぶ独自のWAN優先制御技術を搭載した。これは,インターネットなどからの通信が,動画であれば自動的に帯域を確保するという機能である。
「WiMAXやLTEには当分手を出さない」
Atheros社のPresident兼CEOであるCraig H. Barratt氏は2008年7月9日,東京都内でAtheros社の「創立10周年の事業説明会」の中で,過去10年の同社の軌跡と今後の事業戦略について説明した。
Atheros社は1998年の設立当初,5GHz帯無線LANの技術で台頭し,その後,2.4GHz帯のIEEE802.11gなどに幅を広げてメーカー間の激しい競争を生き残ってきた会社である。
最近は,BluetoothやGPSなどのICおよびモジュールも手がけるようになっているが,話題のWiMAXやLTEに手を出す考えは現時点ではないという。「WiMAXやLTEは,普及までの道筋が複雑で,しかもかなり時間がかかると見ている。我々のパートナーがそれらに関係することはあっても,我々が直接開発することは現時点ではない」(Barratt氏)。
一方で,無線LANはますます伸びると見る。「無線LANを搭載する機器は従来はパソコンなどに限られていたが,最近はデジタル・カメラなど機器の種類が増えている。加えて,5GHz帯無線LANは,米Intel Corp.などがIEEE802.11nに対応するこれからが本当の普及期。2009年には5GHz帯の利用が2.4GHz帯よりも優勢になってくるだろう」(Atheros社のBarratt氏)。