東北大学の開発した,光ディスクの記録ピットに多値情報を記録する技術の概要
東北大学の開発した,光ディスクの記録ピットに多値情報を記録する技術の概要
[画像のクリックで拡大表示]

 東北大学は,光ディスクの記録ピットに多値情報を記録する技術を開発した(発表資料のPDF)。既存のCDやDVDでは,ピットの有無を利用して,1ピット当たり1ビットの情報を記録している。開発した技術では,ピットの形状を工夫することで,1ピットに多値情報を記録することを可能にした。具体的には,各ピットの形状を,記録媒体表面からV字型に掘り下げる溝状にし,溝の向き(方位角)によって情報を記録する。読み取り時には円偏光の光を照射する。するとこの光は,ピットのV溝に2回反射して,楕円偏光に変化する。この際,楕円偏光の主軸方位角とV溝の方位角の間に関連性があるため,ピットに記録された情報を読み取れる。今回,簡易的な実験により,180度を512(=29)分割した分解能で方位角を検出できることを確認した。これにより,1個のピットで9ビットの情報を記録できることを実証した。従って,既存のCDやDVDに比べ,9倍の記録密度が得られるとする。加えて,V溝形状のピットはスタンパにより複製できるため,大量生産に向く。

 今回の簡易実験では,Siウエハー上に直径2μm,深さ1μmで,斜面の傾斜角が45度のV字型の溝状ピット列を形成した。検光子の方位角を変えながら偏光光学顕微鏡で観察し,溝状ピット列からの反射光が,それぞれの溝の方位角に応じた変化を示すことを確認した。さらに,感光紙を使った実験で,楕円偏光の反射光の主軸方位角を±0.14度の誤差で読み取ることに成功した。

 今回開発した記録・再生方式は,既存のCDやDVDの記録ピットの形状を工夫するだけで多値情報の記録が可能になる。このため,検出部に偏光読み取り機構を追加するだけで読み取ることができ,従来技術と整合性が高いとする。さらに,記録情報を楕円偏光の反射光の主軸方位角に反映させているため,この反射光を検出可能であれば,遠方でも読み取れる。従って,バーコードや商品タグなどの用途への適用も可能だ。