図1:連盟旗を持ち気勢を上げるロボット・ベンチャー4社の代表。左からヴイストンの代表取締役 大和信夫氏,ビジネスデザイン研究所の代表取締役社長 木村憲次氏,ゼットエムピーの代表取締役社長 谷口恒氏,テムザックの代表取締役 高本陽一氏。左右のロボットはそれぞれヴイストンの「Vstone Tichno(ヴイストン ティクノ)」とテムザックの「テムザックIV号機」。
図1:連盟旗を持ち気勢を上げるロボット・ベンチャー4社の代表。左からヴイストンの代表取締役 大和信夫氏,ビジネスデザイン研究所の代表取締役社長 木村憲次氏,ゼットエムピーの代表取締役社長 谷口恒氏,テムザックの代表取締役 高本陽一氏。左右のロボットはそれぞれヴイストンの「Vstone Tichno(ヴイストン ティクノ)」とテムザックの「テムザックIV号機」。
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図2:連盟各社が手がけるロボット。左から,ビジネスデザイン研究所の「PLEO(プレオ)」(2体),同「ifbot(イフボット)」,ヴイストンの「Robovie-X(ロボビーエックス)」,ゼットエムピーの「nuvo(ヌーボー)」,同「miuro(ミューロ)」,テムザックの「Roborior(ロボリア)」。
図2:連盟各社が手がけるロボット。左から,ビジネスデザイン研究所の「PLEO(プレオ)」(2体),同「ifbot(イフボット)」,ヴイストンの「Robovie-X(ロボビーエックス)」,ゼットエムピーの「nuvo(ヌーボー)」,同「miuro(ミューロ)」,テムザックの「Roborior(ロボリア)」。
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図3:2008年4月21日にテムザックが韓国知識経済部と取り交わした投資意向書。法的な拘束力はない。
図3:2008年4月21日にテムザックが韓国知識経済部と取り交わした投資意向書。法的な拘束力はない。
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 国内ロボット・ベンチャーのテムザック,ビジネスデザイン研究所,ヴイストン,ゼットエムピーは2008年6月18日,ロボット市場の拡大を目的とする組織「次世代ロボット市場創造連盟」を設立した。今後4社は,これまで独自に行っていたマーケティング活動で協力していくほか,技術の貸与や交換,海外との提携などを進めていくという。「1社で頑張っていても,産業を興すほどの力にはならないという思いが常にあった」(ビジネスデザイン研究所の代表取締役社長 木村憲次氏)。

 連盟の会長となるのは,災害時に救助活動を行う大型ロボットから家庭用の留守番ロボット(Tech-On!関連記事1)までを幅広く手がけるテムザック。連盟本部は,家庭や医療施設で人の相手をするロボット(Tech-On!関連記事2)などを販売するビジネスデザイン研究所の本社内に設置する。ヴイストンはサッカーをする2足歩行ロボット(Tech-On!関連記事3),ゼットエムピーは音楽ロボットプレーヤー(Tech-On!関連記事4)などの開発でそれぞれ知られている。「各社の手がける分野が微妙に違っているため,(協力し合えることは多いが)競合することはあまりないだろう」(テムザックの代表取締役 高本陽一氏)。4社の売上高は現在,ビジネスデザイン研究所を除く3社がそれぞれ約2~3億円,ビジネスデザイン研究所が約17億円だという。

 マーケティング面での協力に関しては,2008年秋に大手流通企業と共に販売促進のためのイベントを行う予定がある。「1社だけでロボットをデパートの片隅に置いても全然わかってもらえない。4社集まればもっとPR効果もでるのではと考えた」(高本氏)。

 技術面では,3Gネットワークを使ってロボットを遠隔操作するテムザックの技術を貸与することにより,他の3社のロボットにも同様の遠隔操作機能をもたせることなどを考えているという。現在2~3万台と言われる日本での家庭用ロボットの普及状況を,5年以内に10倍以上にすることなどを目標に掲げる。

「日本か韓国か」,連盟の抱えるジレンマ

 高本氏によると,2008年2月に韓国で成立した「知能型ロボット開発及び普及促進法」*1が,連盟発足のきっかけになったという。高本氏が「ショックだった」と言うこの法律は,ロボット開発企業を対象とする投資会社の設立や公共機関にロボットの買取を要請する制度などに言及し,国を挙げてロボット産業を興そうという韓国の姿勢を明確に示したものである。4月にこのニュースを知った4社の代表は,日本のロボット産業に対する危機感を高め,互いに連絡を取り合い,5月上旬に連盟の発足を決定した。

*1: この法律が対象とする「知能型ロボット」の定義は「外部環境を自ら認識して状況を判断して自律的に動作する機械装置」である。

 「本当なら日本で(ロボット事業を)やりたいが,無理かもしれないと思うこともある」――高本氏からはこんなコメントも聞かれた。たとえば同氏は,連盟4社のようなベンチャー企業が日本でロボット事業に関する補助金を得ることは難しいとする。日本では,高度な技術を駆使したロボットの開発に補助金が出ることが多いという。すぐに製品化して利益を得る必要がない大企業と異なり,ベンチャー企業はできるだけ早い段階で製品化して開発資金を回収する必要がある。そのため,技術的に高度なロボットよりも市場で売りやすいロボットを開発する傾向がある。その結果,補助金の多くは大企業や有名大学に割り当てられることになるという。

 高本氏は,そういった大企業にロボット市場を開拓していこうという意思がそれほど強くないことが問題であるとする。「トヨタやホンダはいつでも市場に参入できるように準備している。だが,リスクのある商売は一切やらない。我々がやるしかない」(高本氏)。

 さらに,補助金を得ることができた場合でも,研究開発費として人件費や材料費のみの補助であり,開発したロボットは独力で市場で売る必要がある。その点で,製品の販売にまで政府の協力が得られる韓国の環境は,ロボット・ベンチャーにとっては魅力的だという。

 こうした日本の状況を鑑みて,連盟としても海外との提携を模索していく。手始めとして,8月に韓国を視察する予定があるという。さらにテムザックは4月21日に,同社が韓国に進出した場合には韓国政府が全面的に支援するという覚書(投資意向書)を韓国政府と取り交わしている。

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