「早期の実施を目指すという立場は変わらない。新たな目標を早く設定できるようにしたい」。

 「6月2日午前4時」に予定されていた地上デジタル放送などの新しい著作権保護ルール「ダビング10」への運用切り替えの延期が確定した。2008年5月29日に行われた,総務大臣の諮問機関である情報通信審議会傘下の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委)」の第38回会合で,主査である慶応義塾大学の村井純氏が冒頭のように発言し,6月2日の運用切り替え実施の断念を,デジコン委として確認した。

 ダビング10への移行は,デジコン委が2007年8月に公表したいわゆる「第4次中間答申」に基づき,同委の合意のうえで実施される手はずになっている。だが,私的録音録画補償金制度を審議している文部科学大臣の諮問機関 文化審議会 著作権分科会傘下の私的録音録画小委員会(録録小委)における議論の決着が付いていない影響で,関係者の合意が出来ない状況になっている。録録小委は5月29日に今期第3回会合を行う予定だったが,「電子情報技術産業協会(JEITA)の委員から『意見調整が出来ていない』との申し出があった」(文化庁)ことを理由に開催が延期されている。

 ダビング10実施のための合意の条件を探る目的で,デジコン委の傘下に設置されたフォローアップWGの主査を任されている慶応義塾大学教授の中村伊知哉氏は,今回の会合で「現時点では『合意できない』ことを確認している。現在,関係者一人一人に合意の条件について個別にヒアリングしている」と現在の状況を説明した。デジコン委の次回を6月2日までに開催するのはほぼ不可能であることから,運用切り替えの延期が確定した。

 中村氏はまた,「この問題は,既に官の問題でもあると認識している」と述べ,(状況の打開に向けて総務省,文化庁,経済産業省の)「関係3省庁の担当者で話し合う場を設けた」と報告した。この会合の第1回は5月28日に,総務省大臣官房 政策統括官(情報通信担当)の中田睦氏,経産省 商務情報政策局 局長の岡田秀一氏,文化庁 長官官房 審議官の吉田大輔氏が同席して行われた模様だ。