東芝情報システムは,ワンセグ放送で受信する映像の乱れを軽減する,エラー補正技術「エラー・コンシールメント」を「組込みシステム開発技術展(ESEC 2008)」(2008年5月14~16日,東京ビッグサイト)でデモンストレーションした。エラー・コンシールメントとは,エラーが発生したフレームに対し,エラーが発生した個所を前フレームを基に修正するというもの。エラー発生がない場合のデータを予測し,予測に基づいてエラー発生個所を補完する。これにより,電波が弱い場所でワンセグ放送を視聴するといった,受信電波が途切れてフレーム映像にエラーが発生しやすい状況であっても,途切れや乱れのない映像を表示し続けることが可能になるという。なお,エラー発生がない場合のデータの予測についての詳細は明らかにしなかった。

 一般に,フレーム映像にエラーが発生してしまうと,エラーが回復するまで復号化処理ができないために,フレーム映像にエラーがなくなるまで復号化処理が停止するので表示映像に途切れが生じる。途切れをなくすため,エラーのあるフレーム映像を破棄して復号化処理を続けることも可能だが,表示する映像に乱れが発生してしまう。

 東芝情報システムはこの技術をライブラリとして用意し,2008年内の実用化を目指しているという。まずは東芝の携帯機器向けメディア・プロセサ「T5G」に組み込むことになるようだ。現在,実用化に向けて処理内容を最適化しているとする。「ワンセグ放送は15フレーム/秒なので,フレームの予測・補完の処理は約67m秒で終わらせなければならない。さらに携帯機器への組み込みを考えると,消費電力を抑えたいので負荷の重い処理はできない。このバランスを考えている」(東芝情報システムの説明員)。

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図1 デモンストレーションの様子。一番左の映像はエラー発生がない状態の映像。右側の四つの映像は次の通り。左上はエラーが発生した映像。右上はエラーが発生したフレームを破棄して復号化を続けた映像であり,乱れが生じている。左下はエラー・コンシールメントを適用した映像で,乱れは見られない。右下は改良型のエラー・コンシールメントを適用した映像。
図1 デモンストレーションの様子。一番左の映像はエラー発生がない状態の映像。右側の四つの映像は次の通り。左上はエラーが発生した映像。右上はエラーが発生したフレームを破棄して復号化を続けた映像であり,乱れが生じている。左下はエラー・コンシールメントを適用した映像で,乱れは見られない。右下は改良型のエラー・コンシールメントを適用した映像。
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図2 復号化処理の流れ。上段はエラー・コンシールメントを行わない場合,下段はエラー・コンシールメントを行なった場合。
図2 復号化処理の流れ。上段はエラー・コンシールメントを行わない場合,下段はエラー・コンシールメントを行なった場合。
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