ケンウッドと日本ビクターは2008年5月12日,都内で記者会見を開き,2008年10月1日に両社が株式移転によって共同持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」を設立し,経営統合することを両社の取締役会で決議したと発表した。なお,経営統合は6月27日に行われる予定の,両社の株主総会での承認が前提となる。共同持株会社への株式移転比率は,日本ビクターが1株に対して持ち株会社が2株,ケンウッドは1対1となる。
経営統合後は,ケンウッドの代表取締役会長の河原春郎氏が共同持株会社の最高経営責任者兼代表取締役会長に,日本ビクターの代表取締役社長の佐藤国彦氏が共同持株会社の代表取締役社長に就任する予定。
「カタ破り」な新事業を第5の柱に
両社は共同持株会社の設立によって,両社の既存事業を「カー・エレクトロニクス,ホーム&モバイル・エレクトロニクス,業務用システム,エンタテインメントの四つの事業セグメントに整理する」(河原氏)。加えて,「映像,音響,無線技術を高いレベルで融合することで,既存の枠にとらわれない『カタ破り』な新事業を創出し,第5の事業の柱を作る」(河原氏)と説明した。こうしたことを含めて,経営統合のビジョンとして「カタ破りをカタチに」を挙げた。
河原氏は経営統合によるシナジー効果を売り上げで300億円,コスト削減で100億円と見込む。これによって2011年3月期に両社合計で390億円の営業利益を目指す。これは2008年3月期の合計96億円の約4倍にあたる。売上高は2008年3月期の両社合計8237億円から2011年3月期に8300億円とほぼ横ばいだが,利益率は1.2%から4.7%と跳ね上がる予定だ。
第5の柱となる新規事業の内容や時期については明らかにしなかったが,日本ビクターの佐藤氏は,「2,3の有望なアイデアについて,事業性を検討しているところ。現場はとても盛り上がっている。まずは300~500億円規模の事業とすることを狙う」と説明する。
まずは両社を成功事例に
なお,経営統合後も,ケンウッド,日本ビクターはそれぞれ事業会社として存続する。ケンウッドは代表取締役社長の塩畑一男氏がそのまま留任する。一方,日本ビクターは現在取締役の吉田秀俊氏が代表取締役社長に就任する。吉田氏は1956年生まれの51歳,「長年の海外経験があり,国内での事業経験もある。今後を乗り切るには若さが必要と考え,これまででもっとも若い社長を抜擢した」(日本ビクターの佐藤氏)という。
両社は2007年10月1日付で共同開発を担うJ&Kテクノロジーズを設立している。約130人の技術者を集め,両社で共通の事業であるカー・エレクトロニクスやオーディオ分野を中心に,共通に使える技術の開発を進めてきた。2008年10月1日の共同持株会社設立時には,「カーエレ,オーディオ分野の生産子会社もJ&Kテクノロジーズの傘下に置き,生産,調達でもシナジー効果を出したい」(河原氏)とする。
日本ビクターの佐藤氏も「経営統合で最初に効果が出てきそうなのはカーエレ分野」と期待を掛ける。ただし,J&Kテクノロジーズが担うのは技術開発と生産まで。商品企画やマーケティング,販売に関しては双方の事業会社が責任を持つ形を取る。「両社はそれぞれ市場で長年,ブランドを築いてきた。まずは調達や開発,生産のような合弁効果が出やすい部分から進めていく」(河原氏)。
質疑応答では河原氏の持論である業界再編に関する質問も出たが,河原氏は「まずは,2社の統合によってAV専業メーカーが蘇るという成功事例を作っていきたい」とした。