米Embarcadero Technologies,Inc.は2008年5月7日,米Borland Software Corp.の開発ツール部門であるCodeGearを買収すると発表した。買収の完了は同年6月30日を予定している。買収価格は2300万米ドル。これにより,「Turbo Pascal」などで一世を風靡したBorlandブランドの開発ツールはついに消滅することになる。

 Borland Software社は1990年代に,パソコン用データベース・ソフトウエアでトップ企業だった米Ashton-Tate社や,ワープロ・ソフトのWordPerfect社を買収するなどにより,米Microsoft Corp.に次ぐ第2位のパッケージ・ソフトウエア会社だった。Borland社製品は,ほぼすべてMicrosoft社と競合していた。しかしMicrosoft社との競合に敗れ,アプリケーション・ソフトウエア事業が経営の重しとなって経営状況は急速に悪化。アプリケーション・ソフトウエア事業を切り離し,1998年には企業システム向けの開発ツール・ベンダーとして「Inprise Corp.」に名称を変更した。

 だがこの戦略も失敗し,2001年に再びパソコン向けソフトウエア開発ツールに注力し,企業名も「Borland Software」としてBorlandブランドを強調する名称に変えたが,結果的に復活には至らなかった。同社はその後,アプリケーション・ライフサイクル管理(ALM)に製品戦略の中核を据え,開発ツールは「CodeGear」部門として切り離し,売却する方向で各社と交渉を進めていた。

 CodeGear部門はJavaプログラムの統合開発環境(IDE)である「JBuilder」や,Rubyを利用したWebアプリケーション開発環境「3rdRail」,C++のIDEである「C++ Builder」,Object Pascal言語のIDEである「Delphi for Win32」などを開発・販売している。

 買収するEmbarcadero Technologies社は,データベース関連の製品やサービスを提供している。データベース設計ツールの「ER/Studio」や,データベースを利用するプログラムの開発を支援する「PowerSQL」,データベース管理のための「DBArtisan」などを提供している。