物質・材料研究機構(NIMS)と科学技術振興機構(JST)は,カラー電子ペーパーの開発に向けて,マルチカラーのエレクトロクロミック表示デバイスを試作した(発表資料)。エレクトロクロミックとは,電圧の印加により物質構造の変化に伴って物質の発色が可逆的に変化する特性である。今回の試作品では,エレクトロクロミック材料に金属イオンと有機分子が数珠つなぎになった「有機/金属ハイブリッド・ポリマー」を用いたという。エレクトロクロミック材料として知られる従来の導電性ポリマーは,耐久性の面で課題があったが,同ポリマーは繰り返し駆動に対して安定であるとする。

 NIMSらは今回,金属イオン種の異なるポリマーを用いて複数色を表示させたデバイスを試作した。このデバイスを-2.5~+2.5Vの間で電圧を変えて色を変化させることで5パターンの色表示を実現したという。今回の試作デバイスは,ハイブリッド・ポリマーをガラス透明電極上に塗布して薄膜を作製し,固体電解質を介して重ね合わせた。デバイスの薄さは2mm。単三電池2個で駆動し,1秒以内での書き込み(発色)と消去(消色)を安定かつ可逆的に繰り返すことができるという。

 なお,NIMSらは今回の結果を,2008年5月29~30日に東京ビックサイトで開催される「環境・エネルギー材料研究展」で発表する予定である。

エレクトロクロミック表示デバイスのマルチカラー化。-2.5Vから+2.5Vまで電圧を変化させるだけで,5種類の表示パターンを表現できる。
エレクトロクロミック表示デバイスのマルチカラー化。-2.5Vから+2.5Vまで電圧を変化させるだけで,5種類の表示パターンを表現できる。
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