IHIは,溶接材料メーカーのナイス(本社兵庫県尼崎市)と共同で,延性の低い金属のロウ材を金属板に接合したクラッドロウ材を開発した。ナイスが2008年夏ごろから販売する予定だ。ロウ材とは,金属同士を接合する際に溶かして使う,接合対象金属とは異なる材料のこと。クラッドロウ材は,金属同士を接合するのに必要なロウ材をあらかじめ金属板にコーティングしたものを指す。

 クラッドロウ材を使うことで,ロウ材を手作業でセットする工程を省ける。例えば,熱交換器の部品にはプレス成形された波状の金属板を使うが,新製品では,プレスした金属板を重ねて加熱炉に入れるだけで板の接触部を自動で接合できる。これにより工程の短縮やコストの削減を図れる上,手作業よりも品質が安定する。

 しかし,従来のクラッドロウ材では圧延すると割れてしまい,金属板への接合が難しい材料があった。その場合,ロウ材にバインダを混ぜて対処していたが,金属同士を接合する工程でバインダからガスが揮発する,残留バインダによってロウ付け品質が低下する,といった問題があった。

 そこで両社は,IHIの「クラッド粉末圧延技術」を利用した。同技術は,粉末を数十μmの厚さで薄板に圧着するもの。それを使うことで,従来は接合が難しかった材料についても,バインダを用いることなくロウ材を金属板表面にコーティングできるようになった。

 両社は今回,5%以上のりんを含むりん銅ロウを銅板に接合したクラッドロウ材と,ニッケル・クロム・シリコン系のニッケルロウをステンレス鋼板に接合したクラッドロウ材を製品化した。いずれも,従来の圧延法では接合が難しく,バインダを使っていたものだ。両社は今後,自動車部品市場,熱交換器などの給湯器関連市場などを中心に販売活動を展開する。