カシオマイクロニクスは,2008年3月28日に開催した取締役会において,液晶パネル用ドライバIC実装向けのCOF(chip on film)基板事業を日立電線へ譲渡することを決議した(PDFの発表資料)。カシオマイクロニクスが会社分割によって,COF基板事業を新設する子会社へ承継させた後,2008年6月1日付けで新子会社の株式をすべて日立電線に譲渡する。COF基板事業の譲渡価額は60億円。既に日立電線と株式譲渡契約書を締結したとする。日立電線は,カシオマイクロニクスの新子会社を株式の取得により子会社化した後,同子会社の商号を「日立電線フィルムデバイス」に変更する。

 カシオマイクロニクスは2008年2月1日に,COF基板事業を日立電線へ譲渡することで協議を始めたと発表していた(Tech-On!の関連記事)。カシオマイクロニクスにとって同事業は主力事業だが,2006年度以降,液晶パネル関連事業への海外メーカーの参入が増え,供給過剰による価格下落や設備投資競争が厳しくなったことから,同事業の譲渡を決めた。

 日立電線は,今回のカシオマイクロニクスからの事業獲得により,COF基板事業の規模を現状の2倍以上に拡大する。生産量の増加やカシオマイクロニクスから譲り受ける償却負担の軽い設備を加えることなどによって,従来に比べて大幅なコストダウンを図り,同事業の業績改善を図る考え。日立電線は,今後の注力事業の一つと位置付ける半導体用TAB(tape-automated bonding)事業とCOF基板事業をバランスよく運営することで,市場変動のリスクを分散させた経営を目指す。さらに,今回の事業獲得によって余裕の出たCOF用の生産設備の一部を,メモリー用TAB事業の生産設備として転用することによって,半導体用TABの増産も図るという。生産拠点である甲府事業所のCOF生産設備については,減損処理を実施する。日立電線の2007年度通期の売上高は,従来に比べ約100億円増加する見込みという。

カシオマイクロニクスの2007年度の純損益は106億円の赤字に

 カシオマイクロニクスは今回の契約締結を受けて,2007年度通期(2007年4月~2008年3月)の業績予想を下方修正した(PDFの発表資料)。純損失を前回発表の31億円の赤字から106億円の赤字に変更した。売上高,営業利益,経常利益は,前回予想額を据え置いた。COF基板事業に関連して75億円の減損損失などを計上することが,修正の要因という。同社は,2007年に山梨事業所のCOF用生産設備の拡張などを行ったが,この工場の本格稼働が遅れ,減価償却費等の費用の増加を吸収できなかったことなどが影響したとする。同社の親会社であるカシオ計算機も,2007年度通期の連結業績予想を下方修正した(PDFの発表資料)。純利益を前回予想の175億円から60億円引き下げ,115億円とした。

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