図◎新材料のリーク特性
図◎新材料のリーク特性
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 富士通研究所と東京工業大学は,次世代FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)向けのメモリ材料を開発した。ビスマスフェライト(BFO)の成分の一部を置き換えたもの。この新材料は,180nm世代の製品で採用されているものと同じ構造のままで,90nm世代以降のFeRAMに適用できるので,大容量FeRAMを実用化できるという。

 一般に180nm世代のFeRAMのメモリ材料としては,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使う。だがPZTは,微細化を進めると情報の記憶に必要な電荷量を得られなくなる。このため,PZTの適用は130nm世代までが限界とされている。それに対してBFOは,PZTより大きな電荷量を蓄えられる強誘電体だ。しかし,BFOを適用した場合はPZTに比べて書き換え回数が少ない上,リーク電流が大きい,という欠点があった。

 そこで同社などは,BFOの成分の一部を置き換えたゾルゲル溶液を利用してBFOを結晶化する「ゾルゲル法」と呼ばれる技術を2種類開発した。一つ目は,ビスマス成分の一部をサマリウムで置き換えることで,書き換えによる劣化を抑える技術。これにより,従来のPZTよりも多い1000億回まで動作することを確認できた(図)。二つ目は,鉄成分の約半分をクロム(Cr)に置き換えたゾルゲル溶液を用いてBFOを結晶化し,リーク電流を低減する技術である。この技術によってリーク電流は,従来のBFOの数千分の1に低減し,PZTと同等に抑えられた。

 富士通などは今後,新しく開発した両技術の融合を目指す。さらに強誘電体を薄膜化することで,低電圧化を進めるとする。