Senior Vice President and General Manager, Digital Enterprise GroupのPat Gelsinger氏
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Larrabeeの概要
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 米Intel Corp.は2008年3月17日(米国時間),米サンフランシスコで同社のマイクロプロセサのアーキテクチャに関する報道関係者向け説明会を開催した(概要)。次世代Itaniumプロセサ「Tukwila(開発コード名)」や,IA-32命令セットを採用したサーバー向け最上位製品「Dunnington(同)」などの説明があったなか,最も本誌が注目したのが「Larrabee (同)」だ。

 Larrabeeは多数のIA(Intel Architecture)コアを採用したグラフィックス処理向けのアーキテクチャ。最初の技術デモを2008年中に実施し,2009~2010年に製品が登場する計画であるという。Intel社によると,Larrabeeが向くのは単体のグラフィックス処理LSIである。「Larrabeeの特徴は,IAコアを採用した点にある。他社はグラフィックス処理のために新しいプログラミング・モデルを導入してきたが,ソフトウエア開発者にとって新しい技術の習得は負担が大きい。IAコアを採用することにより,これまで開発者が慣れ親しんできたプログラミングのノウハウやツールをそのまま生かせる」(同社Senior Vice President and General Manager, Digital Enterprise GroupのPat Gelsinger氏)。

 Larrabeeのため,Intel社は新しいベクトル命令セットやキャッシュ・アーキテクチャを開発しているという。ベクトル演算処理ユニットとキャッシュを各コアに配し,キャッシュはチップ全体で一貫性を保つ。「従来のキャッシュ技術はグラフィックス処理に効果的ではなかった」(Gelsinger氏)。多数のIAコアと併せて,1個のLSIでTFLOPS(tera floating-point operations per second)の性能を実現できるとしている。

 さらに,ソフトウエア開発者を支援するため,同社はDirectXやOpenGLなど業界標準のAPIに対応した,Larrabee向けのツールも提供する予定である。Intel社がLarrabee技術を数名のソフトウエア開発者に見せたところ,「反応は圧倒的に前向きだった。30年間コンピュータ業界で働いてきたが,新しいプラットフォームにこれだけ前向きの反応が得られたことは今までなかった」(Gelsinger氏)。

新しいベクトル演算向け命令セットをマイクロプロセサにも

 もう一つグラフィックス関連で注目されたのは,「AVX(Advanced Vector Extensions)」と呼ぶ新しい命令セットだ。AVXは2010年に登場予定のマイクロアーキテクチャ「Sandy Bridge(開発コード名)」で搭載を計画している。これまでの浮動小数点演算向けの拡張命令SSEでは,128ビットのデータまでしか対応していなかったが,AVXでは256ビットのベクトル演算を可能にする。また命令に与える引数を2個から3個に増やすことで,処理に必要な命令数やレジスタ数を減らせるとしている。