図1 開発したアンプ・モジュールとその前に置くデジタル・プレディストーション回路などの構成
図1 開発したアンプ・モジュールとその前に置くデジタル・プレディストーション回路などの構成
[画像のクリックで拡大表示]
図2 デジタル・プレディストーションの有無によるアンプ出力の違い
図2 デジタル・プレディストーションの有無によるアンプ出力の違い
[画像のクリックで拡大表示]

 日本無線は,第3.9世代携帯電話システムの基地局向けに,効率が高いリニア・パワー・アンプ(PA)を,窒化ガリウム(GaN)HEMT(高電子移動度トランジスタ)を用いて開発したと発表した。W-CDMA信号4波を用いた評価試験では,周波数が2.1GHz前後で帯域幅が20MHz,出力電力が30~40Wの場合に,利得60dBと効率43%を実現できたという。

 同社は今回,高効率のリニアPAを(1)W.H.Doherty方式のアンプ(ドハティ・アンプ),(2)独自に工夫したデジタル・プレディストーションによる歪みの補償,の二つを採用したことで実現したという。

 このリニアPAの構成は,二つのアイソレータの間にアンプを多段に接続したもの(図1)。(1)のドハティ・アンプは最後の段に採用した。ドハティ・アンプは2個のアンプの出力を合成して高効率を実現する技術で,1個のアンプ(キャリア・アンプ)を常時動作させ,もう1個のアンプ(ピーク・アンプ)を,出力が高い場合だけ動作させてキャリア・アンプの出力に加える。PAの線形性と効率を高める方策として,最近になって第3世代携帯電話システムやOFDMを用いたモバイルWiMAXなどでの採用が検討されている。

 (2)のデジタル・プレディストーション回路は,アンプ出力の歪みと逆の特性を持つ信号をデジタル信号処理で生成して出力の線形化を図る技術。PAモジュールの前に周波数変換器,およびA-D/D-A変換器などと共に利用する。このデジタル・プレディストーションで,PAの出力の歪みを30dB以上減らせるという(図2)。

 今回の成果について同社は現在開催中の電子情報通信学会2008年総合大会(2008年3月18日~21日,北九州学術研究都市)で21日に発表する予定である。