高輝度光科学研究センター(JASRI),科学技術振興機構(JST),理化学研究所,松下電器産業,筑波大学は共同で,DVD-RAMなどの書き換え可能な光ディスクに使う代表的な相変化光記録媒体の材料の構造が高速に変化する様子の観測に成功したと発表した(発表資料)。

 相変化記録は,アモルファス相と結晶相の相変化を利用する。相変化光ディスクで情報を記録する場合,結晶状態にある記録膜にレーザ光を短時間照射して溶かし,急冷する。こうすると溶融状態からの結晶化が間に合わず,アモルファス状態で固化する。ここに,アモルファス相が結晶化しない程度の弱いレーザ光を照射すると,アモルファス相と結晶相で反射光の強度が変化するため,記録情報を読み出せる。一度書き込んだ記録を消去する場合には,アモルファス相が融解しない程度の強いレーザ光を照射し,原子を再配列させることで結晶相に戻す。この結晶→液体→アモルファス→結晶の相変化のサイクルを繰り返すことにより書き換え可能な光ディスクは動作する。

 JASRIらは今回,これらの相変化の様子を最速40ピコ(p)秒の時間分解能で観測できたとする。また物質構造の観測と同時に光学反射率を測定。それにより,(1)レーザによる光記録とnmスケールでの物質の構造変化が同じ時間尺度で起こる,(2)今回利用した相変化材料のGe2Sb2Te5とAg3.5In3.8Sb75.0Te17.7で,相変化直後の結晶化過程が異なる,の2点が明らかになったという。

 このための装置としてパルス・レーザによる測定試料への光記録と,放射光X回折測定をp秒精度で同期して行うことができる「X線ピンポイント構造計測システム」を製作した。パルス・レーザには大型放射光施設「SPring-8」の高フラックス・ビームを利用。さらに,測定試料の位置を照射するごとに回転移動させ,常に新しい試料が測定位置に現れるような試料台を製作した。

 今回の結果は,日本応用物理学会誌「Applied Physics Express」の2008年3月14付けオンライン版に掲載された。

Ge<sub>2</sub>Sb<sub>2</sub>Te<sub>5</sub>材料とAg<sub>3.5</sub>In<sub>3.8</sub>Sb<sub>75.0</sub>Te<sub>17.7</sub>材料の相変化モデル
Ge<sub>2</sub>Sb<sub>2</sub>Te<sub>5</sub>材料とAg<sub>3.5</sub>In<sub>3.8</sub>Sb<sub>75.0</sub>Te<sub>17.7</sub>材料の相変化モデル
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