八千代工業は,四日市製作所の敷地を拡大して新工場を建設,完成車の生産能力を増強する。まずは2009年前半にエンジンの組み立てだけを始め,2010年後半までにエンジン粗加工から完成車組み立てまでの一貫生産体制を構築する。

 同製作所では現在,ホンダの軽自動車のうちFFレイアウトの「ライフ」「ゼスト」とミッドシップ・レイアウトの「アクティ」「バモス」を同一ラインで混流生産している。FFレイアウトとミッドシップ・レイアウトは,車両におけるエンジンの設置場所が異なる(前者は車両前方,後者は運転席と後輪軸の間に設置する)ため,混流生産の効率を高める上で制約が多かった。新工場の稼働後は,新工場の生産品目をライフとゼスト,既存工場の生産品目をアクティとバモスとし,1ロットが約30台のロット生産とする。これにより生産性の向上が見込める。新工場への投資総額は500億円。

 板金プレス部品の内製にも力を注ぐ。四日市製作所から自動車で10分程度の場所に,中・小物の板金プレス部品の生産会社「ワイジーテック」(八千代工業の子会社である合志技研工業との合弁会社)を設立。中・小物の内製化比率を高めていく。具体的には現在27%の内製率(中・小物だけでなく大物も含めた値)を,次期生産車種では52%,2011年度末には70%以上まで引き上げる予定だ。

 板金プレス部品の内製率向上に向け,プレス加工ラインも改善する。従来は,部品の種類による分類でラインを構築していたが,この方式では新機種への切り替え時における工数の変更に対応しきれず,一時的にロスが生じていた。今後は,部品の種類ではなく加工時の打点数で分類する。この方式であれば,新機種への切り替え時もほとんどロスが生じないと,八千代工業は予想している。

 同社代表取締役社長の白石基厚氏は,もともとホンダ代表取締役専務取締役。新工場立ち上げの意気込みについて,同氏は「新工場のラインでは,ホンダでできなかったことを追求していきたい」と語った。