富士通研究所とドイツのハインリッヒ・ヘルツ研究所(HHI)は,光増幅の際に発生する光雑音を,非線形光ファイバを用いた光スイッチで低減する技術を開発した(発表資料)。この技術を用いて,107Gビット/秒の位相変調信号光で光雑音を低減できることを実証した。320kmを伝送し,伝送前のデータ特性をほぼそのまま再現する受信に成功したとする。非線形光ファイバとは,非線形光学効果を強める特殊構造を備えた単一モード光ファイバである。

 今回開発した技術は,富士通研究所とHHIが開発したピコ秒(ps,1psは1兆分の1秒)以下で光信号処理が可能な光スイッチの技術を応用したもの。実証実験では,今回開発した技術を用いた超高速光スイッチを,伝送路の中間に設置した。これにより,この光スイッチを用いない場合と比較して,伝送距離を約2倍に拡張できるとする。

 光増幅器から発生する光雑音は,光信号の品質劣化の原因となる。光信号は高速・大容量になるほど光雑音の影響を受けやすくなり,伝送距離が制限される。従来は光増幅技術により光信号のパワーを増やすことに加えて,光信号を電気信号に変換してから光雑音の影響を取り除き,再び光信号に変換する方法で光雑音を低減していた。今回開発した技術により,省電力で効率的なネットワークが実現できるとする。

 今回開発した技術は,非線形性の高い光ファイバの設計を最適化することで,より広い波長帯をカバーでき,多様な光変調方式の光信号に適用が可能とする。今後,さらなる高性能化を図り,実用化に向けた研究を進めるという。

 富士通研究所とHHIは,今回開発した技術の詳細を,2008年2月24~2月28日に米国・サンディエゴで開催された「OFC/NFOEC 2008(The Optical Fiber Communication Conference and Exposition and the National Fiber Optic Engineers Conference 2008)」で発表した。