グラフェン1層ではフーゲの法則に従って雑音が生じるが,2層にすると急に抑制される
グラフェン1層ではフーゲの法則に従って雑音が生じるが,2層にすると急に抑制される
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 米IBM Corp.は2008年3月6日(米国時間),グラファイト(黒鉛)の1原子層に相当する「グラフェン」を2枚重ね合わせてトランジスタを試作したところ,ナノデバイス特有の1/f雑音を大幅に抑制できることを見いだしたと発表した(ニュース・リリース)。

 グラフェンはナノサイズのトランジスタや回路を形成する「ポストSi材料」として世界中で研究されている。一般にナノデバイスでは寸法が小さくなるに連れて1/f雑音と呼ばれる制御不能な雑音が増え,S/Nが悪化する問題がある。この現象は「フーゲの法則」として知られており,グラフェンやカーボン・ナノチューブ,Si材料でも発生する。このため,1/f雑音の抑制はナノデバイスを実現する上で最も重要な課題の一つと考えられていた。

 IBMは今回,グラフェン1層でトランジスタを試作し,このデバイスがフーゲの法則に従っていることを確認した。一方,重なり合った2層のグラフェンで同じトランジスタを試作したところ,予想に反し,雑音が大幅に抑制されることを見いだした。2層のグラフェン間で強い電子結合が生じることで雑音が抑制されるという。今回の現象を詳細に解明するためにはさらなる研究が必要とするが,今回の発見によってさまざまな用途で2層グラフェンを利用できる可能性が出てきたとする。今回の成果は学会誌「Nano Letters」で報告した。