島根県産業技術センターの大型色素増感太陽電池パネル
島根県産業技術センターの大型色素増感太陽電池パネル
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ペクセル・テクノロジーズは,太陽電池パネルをブースの屋根代わりに利用
ペクセル・テクノロジーズは,太陽電池パネルをブースの屋根代わりに利用
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フジクラの大型パネル。これは高変換効率の材料は用いておらず,耐久性を重視したタイプであるという。
フジクラの大型パネル。これは高変換効率の材料は用いておらず,耐久性を重視したタイプであるという。
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 2008年2月27~29日に東京ビッグサイトで開催中の「第1回国際太陽電池展」では,これまでになく大面積の色素増感太陽電池(DSC:dye-sensitized cells)が続々と出展された。出展したのは,島根県産業技術センター,ペクセル・テクノロジーズ,フジクラなどである。

結晶Si太陽電池と同じ耐久性基準をクリア

 島根県産業技術センターは,島根県庁が運営する研究機関。同センターは,255mm角と比較的大きなDSCのモジュールを15枚並べた,寸法が約1.25m×約0.75mのパネルを出展した。特徴は,(1)モジュール変換効率が最大5.8%と比較的高い,(2)120mm角のモジュールは,温度85℃で1000時間の環境下で性能劣化5%以下という耐久性の条件をクリアした,(3)モジュールの大部分をスクリーン印刷で製造した,ことなどである。

 (2)の耐久性の条件は「結晶Siの太陽電池の耐久性を図るためのJIS規格。DSC向けの規格がないので,参考基準にした。DSCでクリアしたのは我々が初めてだろう」(同センター プロジェクトマネージャーの野田修司氏)。耐久性の向上は,ルテニウム(Ru)錯体からなる色素材料を独自に開発したことや,封止技術を改善したことなどの成果だという。

 (3)のスクリーン印刷は,数回に分けて実施する。まず,ガラスにITO膜を形成したアノード(正極)基板上に酸化チタン(TiO2)をスクリーン印刷する。次に配線,色素,封止膜の順にそれぞれスクリーン印刷する。後は,これにカソード(負極)の金属箔とバック・フィルムを重ねて張り合わせ,電解液を注入すればよいという。

 製品の実用化はこれから。同センターが製品事業を手がけることはないため,技術をメーカーに委託する格好になるという。

 ペクセル・テクノロジーズは,発表したばかりの2.1m×0.8mの大型DSCパネルをブースの天井代わりとして吊るす格好で出展した(関連記事)。このパネル1枚で出力電圧は112V超と家庭の電源電圧を超えている。モジュール変換効率は2%前後と高いとは言えないが,フレキシブルなITO-PENフィルム上にTiO2を室温,非焼成で成膜しているのが特徴である。

効率の高さでは有数

 フジクラは,東京理科大学の荒川研究室との共同研究で,セル変換効率が独自計測で10.7%というDSCとしては非常に高い値のモジュールを出展した。10cm角のモジュール変換効率も8.3%(枠有り),9.1%(枠なし)と高い。ただし,現時点ではまだ耐久性に課題があるという。