IBM社が作製した今回の測定のイメージ
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AFMの音さ型のカンチレバー
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Cu結晶(111面)上でCo原子を引きずるのに必要な力の分布
Cu結晶(111面)上でCo原子を引きずるのに必要な力の分布
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Cu結晶(111面)上で炭素(C)原子を引きずるのに必要な力の分布
Cu結晶(111面)上で炭素(C)原子を引きずるのに必要な力の分布
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 米IBM Corp.は,ドイツUniversity of Regensburgと共同で,原子を1個ずつ移動させるのに必要な力を材料ごとに直接測定することに成功したと発表した(発表資料)。この技術の論文も2月22日付けの米科学誌「Science」に掲載された。IBM社は1980年代から原子の操作による微細加工技術を開発しているが,今回の技術は,「原子サイズのICやメモリなどのナノスケールの微細構造の設計や製造に向けた重要な一歩」(IBM社)としている。

 IBM社によれば,今回の技術によって,原子1個を動かすのに必要な力が材料の組み合わせの違いで大きく異なることが詳細に分かるようになったという。例えば,滑らかな白金(Pt)の表面上にあるコバルト(Co)原子を移動するのに必要な力は,210p(ピコ)N。一方,銅(Cu)の表面上にあるCo原子を動かすには,17pNだけでよい。

 こうした成果は,非常に高性能な原子間力顕微鏡(AFM)を開発することで実現した。AFMは一般に,微細な突起を備えたカンチレバー(片持ち梁)で原子表面を走査し,その表面の凹凸を測定する。新しいAFMは,カンチレバーが音さ型の共振器になっており,原子との位置関係で共振周波数が微妙に変化することを測定するという。