大日本印刷(DNP)とDNPアーカイブ・コムは,音楽に埋め込む電子透かし技術を利用した情報配信の実証実験を行う(発表資料)。2008年2月23日~4月6日の間の毎週土曜日と日曜日に,東京両国の江戸東京博物館で開催される企画展「川瀬巴水展」において実施する。

 今回の実証実験は「Layered-音楽で見える、積み重なる時代-」と名づける。展示作品の制作時期によって分けられた会場の三つのコーナーで,異なるBGMを流す。それぞれのBGMには,DNPの電子透かし技術である「ゲンコーダMark」を利用し,コンテンツ識別用のID情報を電子透かしデータとして埋め込んでおく。実験の参加者は,受け付けで専用のPDAを受け取る。参加者が各コーナーに設置されたBGM再生機にPDAを近づけることにより,PDAに搭載した専用ソフトウエアが,BGMに埋め込まれたID情報を抽出し,それに対応したコンテンツを表示するというもの。コンテンツは川瀬巴水の版画や,版画に描かれた場所の制作当時の写真,その場所の現在の写真などを用意する。

 ゲンコーダMarkは,DNPが開発した電子透かし技術。音楽の品質を損なうことなく,音楽に文字などのデータを埋め込むことができるとする。これにより,街頭や店頭での音楽再生や,テレビやラジオでの音楽の放送を通じて,音楽を聴く人に付加的な情報を送信できる。DNPは2008年度から,ゲンコーダMarkのシステムの本格導入を進める。このシステムに関連して,2009年度に5億円の売り上げを見込む。DNPアーカイブ・コムはDNPの100%子会社で,コンテンツ・ビジネスを行っている。

 川瀬巴水展は江戸東京博物館の5階にある第2企画展示室で,2008年2月19日~4月6日に開催される。本実験はその会期中の毎週土曜日と日曜日の,14時30分~17時に実施する。受け付けは16時30分まで。川瀬巴水は大正~昭和時代の版画家。作品を江戸時代の浮世絵と同様の伝統的な木版画技法によって制作した。そのほとんどが風景作品であったたため「昭和の広重」「旅情詩人」などと評されるという。