新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,自動車分野向けの炭素繊維強化樹脂(CFRP)関連技術の成果を「nano tech 2008」(2008年2月13~15日,東京ビッグサイト)で明らかにした。サイドドア・インナーパネルやプラットフォームなどの構造部材について軽量化や高速成形のメドが付いたという。今後は技術開発プログラムの「実施者」だった東レや日産自動車が事業化を目指すことになる。

 技術開発プログラムの名称は「自動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発」(プロジェクトコード:P03005)というもの。2003年4月~2008年3月の期間で進められてきた。炭素繊維と熱硬化性樹脂の複合材に関する成形技術や異種材との接合技術,安全設計技術,リサイクル技術など幅広い技術を開発対象としている。

 プログラムの最終目標は,CFRP製とすることで自動車用軟鋼板製に対して50%の軽量化(部材での比較)を実現すること,CFRP製部材でエネルギ吸収量を鋼製部材の1.5倍に高めること,そして成形サイクル時間を10分以内にすること。軽量化や安全性(エネルギ吸収量)の面でCFRPが優れていることは知られていたが,航空機部品などで一般的な製法であるレジン・トランスファー・モールディング(RTM)ではサイクル時間が160分と長く,自動車分野で普及する上でのネックの一つとなっていた(価格が高いということもある)。

 10分以内の成形(ハイサイクル成形)を実現するために,「基材配置(型内への炭素繊維の設置)」を1分以内(RTMは25分),「樹脂含浸(樹脂の充填)」を3分(同35分),「樹脂硬化」を5分(同90分),「離型」を1分(同10分)に短縮した。2005年度の段階でサイドドア・インナーパネルについてはハイサイクル成形が可能なことを確認済みだったが,プラットフォームについても実現できる見込みだという。

 NEDOではさらに,2008年4月~2013年3月の期間で,炭素繊維と熱可塑性樹脂の組み合わせによる複合材の技術開発プログラムを計画している。成形サイクル時間やリサイクル性の点では,熱可塑性樹脂の方が熱硬化性樹脂よりも有利だからである。ただし,強度面では若干劣るため,使用部位としてはルーフなど相対的に強度を受け持たずに済むものを想定している。また,熱可塑性樹脂を使う場合,炭素繊維との接合性も課題になるという。

CFRP製サイドドア・インナーパネル
CFRP製サイドドア・インナーパネル
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