Dyの編在の様子とナノコート磁石の磁気特性
Dyの編在の様子とナノコート磁石の磁気特性
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 日立製作所は,少量のジスプロシウム(Dy)で磁石の保持力を高められる「ナノコート磁石」を「nano tech 2008」に出展した。Dyを含む溶液(ナノコート溶液)を塗布したネオジム磁石を熱処理して,Dyを磁石の結晶粒界近傍に偏在させたもの。従来も保磁力向上のためにネオジム磁石にジスプロシウムを添加していたが,今回は粒界近傍に偏析させることでより少ない添加量で同等の保磁力向上効果が得られるという。磁石の表面から熱処理によってDyを拡散させるため,極端に厚い磁石の場合は内部に浸透しないが,厚さ10mm程度までなら適用できるという。「磁石の種類にもよるが,Dyの量は従来の数分の1に減らせる」(同社)。

 また,保磁力の向上は耐熱性の向上につながるため,高温環境下で使う磁石への適用も期待できるとしている。「ハイブリッド車や電気自動車用のモータなど,高温にさらされる可能性のある磁石に使える」(日立製作所)。Dyは高出力用モータの磁石に必要なレア・アースだが,現在はそのほとんどを中国からの輸入に頼っている。同国の供給量規制などで価格が高騰しているため,代替材料や使用量削減技術の開発に注目が集まっている。