【図1】顔料のSEM写真。左は開発品で粒子を50nm以下に微細化,右は既存の顔料
【図1】顔料のSEM写真。左は開発品で粒子を50nm以下に微細化,右は既存の顔料
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【図2】溶媒に分散させた際の濃度の違いによる透明性の比較。左は既存の顔料であり,濃度を上げるにしたがって濁ってくる。右は開発した顔料で,濃度を上げても透明なまま
【図2】溶媒に分散させた際の濃度の違いによる透明性の比較。左は既存の顔料であり,濃度を上げるにしたがって濁ってくる。右は開発した顔料で,濃度を上げても透明なまま
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【図3】耐候性試験の結果。既存の染料は光によって劣化していくが,開発顔料は既存顔料に近い耐候性を維持している
【図3】耐候性試験の結果。既存の染料は光によって劣化していくが,開発顔料は既存顔料に近い耐候性を維持している
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 富士フイルムは,マイクロ空間で反応を起こさせる化学プロセスによって粒子径を50nm以下に微細化することにより,耐候性と透明性に優れる顔料を開発することに成功し,国際ナノテクノロジー総合展「nano tech 2008」(2月13~15日,東京ビッグサイト)に参考出展した(図1)。ポスターや看板など屋外で使う用途を開拓する考え。発売時期は未定という。

 顔料は,有機色素を水などの溶媒に分散させて着色させる色材であり,耐候性に優れるが,透明性に劣るという問題があった。一方,染料は,有機色素が溶媒に溶解しているために透明性に優れるという問題がある。今回開発した新顔料は粒子を微細化することによって光の散乱を防ぐことによって染料並みの透明性をもたせることに成功した(図2)。一方で,耐候性については従来の顔料並みという特徴を持っている(図3)。

 顔料粒子を微細化するために同社は,「マイクロ化学プロセス」というマイクロ空間(μmオーダーの空間)で反応を進める手法を採用した。出発原料は,市販の有機顔料(「PY128」や「PR254」など)である。これをいったん溶媒により分子レベルまで溶解し,微細空間中で再び粒子化する。マイクロ空間中で,水素結合やファンデルワールス力によって凝集反応を起こすために,粒子径のコントロールが可能になったという。

 実際には,ステンレス鋼製の基板上に機械加工(マイクロドリル)とマイクロEDM(Micro Electro Discharge Machining)によって,500μm幅の流路を形成する。この流路に溶解した顔料を流す連続プロセスであるために大量生産が可能であり,将来的には既存の顔料と同程度の価格で提供したいとしている。