「2度とこのようなことがないように抜本的改革に努めていく」――三洋電機社長の佐野精一郎氏は2007年12月25日,過去の決算報告を訂正する記者会見でこう繰り返した。同社が訂正したのは,2001年3月期~2007年9月中間期までの単独決算。2006年3月期以降の決算で適用している厳格な会計ルールを2001年3月期にまでさかのぼって適用したところ,関係会社株式減損と法人税などの額を前倒しで計上することになった。これにより,2003年3月期~2005年3月期に同社が配当した約280億円が,原資がないにもかかわらず配当をした「違法配当」に当たる疑いが出てきた。これについて同社は,違法配当の可能性は認めたものの,「故意ではなく違法性はないと認識している」と説明した。なお,東京証券取引所は同日付で,同社を監理ポストに割り当てた。

 同社によると,前倒しした関係会社株式減損の大半は半導体事業と液晶事業によるもの。2006年3月期の減損額は訂正前が2054億円で,訂正後が737億円。差額の約1300億円は,新ルールによると2001年3月期に計上すべきものだった。2001年3月期の減損額は,14億円から1313億円に訂正している。これは半導体と家電事業を「将来は成功する事業として過大評価していた」(同社)ために発生した。

 また,2003年3月期~2004年3月期の減損の差額である約550億円は,2002年3月期に計上すべきものだった。そのため同社は,2002年3月期の減損額を86億円から631億円に訂正。これは「液晶事業の過大評価によるものだった」(同社)。

 なお,経営陣の責任問題については主に二つを実施する。一つは,2004年3月期以降に支払いを保留していた退職金を,新旧取締役・監査役は全額を不支給に,現執行役員は一部を不支給とする。対象者は,創業者一族出身で社長や会長を歴任した井植敏氏を含む計60人。総額は約12億円に上る。二つ目は,決算関係役員らの減俸処分。社長の佐野氏,財務担当役員3人,常勤監査役3人の計7人が,現行の給与カットとは別に6カ月間の10%減俸処分を受ける。