会見後,握手を交わす東芝 取締役 代表執行役社長の西田厚聰氏(右)と,シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏(左)
会見後,握手を交わす東芝 取締役 代表執行役社長の西田厚聰氏(右)と,シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏(左)
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 「シャープの液晶はこれからの東芝の商品像に合致」「最高の商品をお客様に提供できる」--液晶テレビ分野での業務提携を発表した東芝とシャープ(Tech-On!の関連記事1)。両社の首脳は,互いにパートナーの技術をたたえ,提携の意義を強調した。

 会見の冒頭,東芝社長の西田厚聰氏は今回の提携について,「大変喜んでいる。それぞれが強みを持つ,液晶分野と半導体分野で緊密な協力関係を構築することにより両社の企業価値,競争力向上を図りたい」と語った。シャープ社長の片山幹雄氏も,「今回の提携で両社の中核事業である液晶テレビ事業と,(シャープの液晶パネルと東芝の半導体という)両社の主力事業がますますレベルを上げていくことで,最高の商品をお客様に提供できる」と自信をみせた。

 会見時点で公表された合意内容は,液晶テレビ向けの基幹部品を互いに供給するという点のみ。2008年度から東芝がシャープに液晶テレビ用システムLSIを,逆にシャープから東芝には32型以上のテレビ向け液晶パネルを供給する。2010年度にはシステムLSIはシャープの需要量の約5割,液晶パネルは東芝の需要量の約4割をパートナーが供給することを目標にする。2008年度の供給量はまだ決まっていないが,すでにシャープの液晶テレビ「AQUOS」には,東芝製システムLSIの搭載が始まっているという。

シャープ製次世代液晶パネルの環境性能も評価した東芝の西田社長

 東芝の西田氏は今回の提携に踏み切った理由として,シャープが堺の新工場で生産を開始する次世代液晶パネルへの期待を挙げた。西田氏は第10世代ガラスを採用するこの液晶パネルを「画質だけでなく,環境性能としての低消費電力,超寿命に加え,薄型,軽量化による利用資源の削減など,これからの東芝の商品像に合致する」と高く評価した。

 東芝がシャープに提供する液晶テレビ向けシステムLSIについては,「当社が持つ半導体技術で,シャープの液晶テレビをさらに高性能,高機能化すると確信している」と自信をみせた。シャープの液晶パネルと東芝の半導体を合わせれば「まさに鬼に金棒だ」(西田氏)。液晶パネルや液晶テレビ向けのシステムLSIだけの提携に留まらず,「両社の協議の中で提携領域が拡大していくことも視野に入れている」(西田氏)と提携拡大の可能性も示唆した。

 今回の業務提携の一方で,東芝は有機ELパネルの開発方針を大きく変える。2009年に量産化を目指していた30型以上の大型有機ELテレビは断念。携帯電話機など向けの中小型有機ELパネルに集中する。次世代の大型テレビには,シャープの液晶パネルを中心に搭載する考えを示した。「液晶パネルは画質,薄さだけでなく,特に消費電力に関して有機ELパネルよりはるかに優れている」(西田氏)のが理由だ。

 なお,売却すると一部メディアで報じられたIPSアルファテクノロジの株式については,「売却する方向だが,現時点ではまだ何も決まっていない」と西田氏は言葉を濁した。

「液晶テレビの性能を決定する要素としてシステムLSIは不可欠」とシャープの片山社長

 シャープの片山氏は「液晶テレビなどのデジタル家電においてシステムLSIはコアとなるデバイス」と位置づけ,東芝のシステムLSI技術に大きな期待を寄せた。液晶パネルの開発や製造に巨額の投資をしてきた同社にとって,「微細化が進むシステムLSIの製造にも,巨額な投資が必要となる。デジタル家電向けのシステムLSIへの対応が課題だった」という。台湾のファウンドリなどに委託している,その他の液晶テレビ向けのLSIについても「東芝に委託する可能性がある」と明かした。

 シャープは東芝に液晶パネルを供給することで「亀山工場,(建設予定の)堺工場の安定した操業が見込める」(シャープの片山氏)。2007年7月の堺工場建設の発表時から,自社向けだけでなく,外販を強化する姿勢を示していた( Tech-On!の関連記事2)。2007年度の同社の大型液晶パネル外販比率は金額ベースで約20%になる見込み。今後の外販比率の目標は「特には決めていない」(片山氏)。

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