マグネシウム・シリサイドを利用した廃熱発電装置のイメージ
マグネシウム・シリサイドを利用した廃熱発電装置のイメージ
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 東京理科大学基礎工学部材料工学科准教授の飯田努氏は,ユニオンマテリアル(本社茨城県・利根町)と共同で,マグネシウム・シリサイド(Mg2Si)を安定して生産する技術を開発した。Mg2Siは,廃熱エネルギを電気エネルギに直接変換する熱電変換半導体材料。廃熱を有効利用することで,地球の温暖化防止などに貢献できる。ユニオンマテリアルは昭和KDE(本社東京)を通し,2008年1月からMg2Si を販売する計画だ。

 一般に,化石燃料のエネルギ利用効率は3割程度。残りの7割は廃熱として捨てられている。そのため,環境問題では化石燃料の消費量を抑えると同時に,廃熱の再資源化が課題となっている。そこで飯田氏らは,廃熱を有効活用でき,さらにそれ自体の環境負荷が少ない材料の開発を進めてきた。中高温度領域での廃熱発電材料としては,鉛とテルルの化合物(Pb-Te)系が知られている。しかし,Pbが有害な上,Teが希少なのが欠点だ。それに対してMg2Siの原料となるMgやSiは資源埋蔵量が豊富で,人体や環境への負荷が少ない。

 飯田氏らによると,大型の発電施設を必要としない廃熱発電ならではの特性を生かし,自動車や各種事業所など分散型の多様な廃熱源を活用することで,エネルギのリサイクルを実現できる。具体的には,Mg2Siを使った廃熱発電装置を自動車のエンジンに適用することで,エネルギ効率を約10%高められるという。こうした自動車分野では,今後15年程度で実用化できる見通しだ。

 なお,飯田氏らは,2007年11月26日から開催の「MRS」(Materials Research Society )でこの研究の詳細を発表する。